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2008.04.16

「専ら(インハウス)派遣」について

 「専ら(もっぱら)」という言葉を英語で表すと、「chiefly(主として)」や「mainly(主に・大概は・大部分は)」だが、人材派遣の現場では、「インハウス(直訳すると「家の中」。家=企業で、企業の施設・組織の内部で業務を行うことを指す⇔外部委託:アウトソーシング)」に言い換え、「専ら派遣」よりも、まさに、専ら「インハウス派遣」という言葉の方が一般使用されているようです。

閑話休題、労働者派遣事業には、一般労働者派遣事業(許可制)と特定労働者派遣事業(届出制)の2種類があり、事業主としては双方の事業所を持つことができますが、所謂「専ら(インハウス)派遣」は、「当該事業者が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないこと」を要件の一つとし、前者の許可基準として規定(労働者派遣法第7条第1項第1号)され、人材派遣を特定の派遣先に限って行うことを禁止しています。

すなわち、「専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるもの」とは、特定の者に対してのみ当該労働者派遣を行うことを目的として事業運営を行っているものであり、それ以外の者に対して労働者派遣を行うことを目的としていない場合を指します。それは、派遣先の確保のための努力が認められない場合等で、客観的に特定の者への労働者派遣を目的としているか否かを判断されます。また、「特定の者」とは、一つであると複数であるとを問わず対象が特定されていることをいうので、他の事業所からの労働者派遣の依頼を、正当な理由なくすべて拒否している場合等、それら以外には派遣を行うことを予定していない場合も含まれ、事業所ごとに判断されます。

そして、前述のとおり、一般労働者派遣事業の場合の許可条件になっているので、「必要があると認めるときは、当該派遣元事業主に対し、当該労働者派遣事業の目的及び内容を変更するよう勧告することができる」と規定(同法第48条第2項)されています。但し、不特定多数の派遣先への派遣を目的としていながら、結果的に派遣先が限定されてしまったという場合には、「専ら派遣」とはみなされません。

違反した場合、一般派遣事業主は、許可の取消し(同法第14条第1項)、事業停止命令(同法第14条第2項)及び改善命令(同法第49条第1項)の行政処分の対象となります。と言うのは、特定の会社専用の人材供給機関となっては、短期的に雇用調整が可能な人材派遣が、正社員雇用の機会を喪失させる恐れがあり、労働力需給の適正な調整を図るという目的に支障を来たすことになると考えられるからです。

 但し、「専ら派遣」の例外として、前記の同法第7条第1項第1号で「厚生労働省令で定める場合※において行われるものを除く」と規定し、勧告の対象とはしていません。

※当該労働者派遣事業を行う派遣元事業主が雇用する派遣労働者のうち、10分の3以上の者が60歳以上の者(他の事業主の事業所を60歳以上の定年により退職した後雇い入れられた者に限る)である場合(労働者派遣法施行規則第1条の3)。但し、60歳未満で早期退職した場合等は非該当。

参考:「労働者派遣事業関係業務取扱要領(最終改正平成20年2月28日)」厚生労働省。「派遣元責任者必携2007年版Ⅱ労働者派遣法」社)日本人材派遣協会。「混成職場の人事管理と法律知識Q&A(産労総合研究所編)」経営書院。「人事・労務担当者が知りたいQ&A人材派遣法の実務(第2版)-派遣先企業の義務と注意点(鹿野美紀編著)」中央経済社。「すぐわかる!人材派遣(岡田良則著)」自由国民社 等。