派遣&請負の情報サイト

人材派遣や請負そして厚生労働省(労働局)の最新情報を発信しています。

メニューを開く
メニューを閉じる

2009.10.23

連立政権で「派遣先責任は強化」されるのか

◆労働契約上の責任は「派遣元」
 労働者派遣事業において、派遣労働者は、派遣先事業主の指揮命令を受けて労働に従事するにもかかわらず、派遣労働者の労働契約は派遣先事業主とではなく、派遣元事業主との間で締結することになっています。従って、原則として、派遣先には労働契約上の責任は生じないことになるのです。
◆特例措置で規定される「派遣先事業主の責任」
 しかしながら、派遣労働者の就業場所は派遣先ですから、派遣先事業主に労働基準法上の責任が生じる場合があります。即ち、派遣中の労働者の派遣就業に関しては、現行の労働者派遣法第44条第2項において、《派遣先の事業のみを、派遣中の労働者を使用する事業とみなして、労働基準法》の一部の規定並びに当該規定に基づいて発する規定(これらの規定に係る罰則の規定を含む。)を適用するとしています。即ち、この派遣先事業主に対する特例措置は、(1)労働時間、(2)休憩や休日、(3)時間外及び休日の労働等々に限定されたもので、特例とされていない事項については、派遣元事業主に労働基準法の規定が適用されることになります。
◆旧野党3党共同の改正法案(廃案)では「派遣先責任を強化」
 当ブログ記事(09/9/10日付):『民主党 連立政権の3党合意で人材派遣業界は崩壊危機』において、『連立政権政策合意書』より一部抜粋し、雇用対策の強化される項目を列記しましたが、当該「政策合意」には「派遣先責任の強化」については明記されていません。ただ、過日、審議未了で廃案となった当時の野党3党共同の「労働者派遣法改正案(概要)」には、派遣先責任の強化が盛り込まれていましたので、ここで改めて以下に該当事項を列記します。それは、(1)労働者派遣の受入れにあたり、派遣先から派遣先労働組合へ通知義務、(2)派遣先での不利益取り扱い禁止、(3)未払い賃金や社会保険未払いの派遣先の連帯責任、(3)派遣先への安全衛生教育の義務付け、(4)派遣先に対する罰則の導入です。
◆「派遣法改正」は改めて十分な議論を
 この「派遣先責任の強化」に基づく規定は、果たして今後改めて提出される「労働者派遣法改正案」に反映されるか否かは不透明ですが、社民党はこれまで規制強化を強く主張してきましたので、連立政権としてどこまで盛り込むのか注視したいと思います。今後の派遣法改正にあたり、長妻厚生労働大臣の意向どおり審議会で議論を重ねることになった為、臨時国会への改正案提出は時間的に合わず、また、“来年の通常国会に出して成果を出したい”と福島社民党党首が意向を表明(10/10)しましたので、通常国会での成立を目指すことになります。いずれにしても、連立政権は「派遣法の規制強化」を基本スタンスとしていますのでその方向へ進むものと推測しますが、派遣法改正に臨むにあたり、単に規制強化のみに止どまらず、「派遣先責任の在り方」を含め、十分な議論がなされることを期待します。