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2009.02.19

少子高齢社会における「雇用創出」の必要性

◆「人口減」と「高齢化」は併進
 総務省の「住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数(平成20年3月31日現在)」調査結果によると、わが国の総人口は「1億2,706万6,178人(対前年100.1%)」で3年ぶりの微増でしたが、自然増加数は「2万9,119人減」で過去最大となりました。総人口に対する65歳以上の割合は21.57%、また、同75歳以上人口の割合は10.04%となり、高齢化は加速しています。また、当ブログ記事(1/27日付)でご紹介のとおり、わが国の将来推計人口(出生及び死亡共に中位推計に基づく)※1)を見ると、2055年には約8,993万人と推計されており、総人口は約3,713万人減少し、現在の約7割になると予測されています。前記ブログ記事では、必然的に減少する「生産年齢人口」を懸念材料として「外国人労働力確保の必要性」について述べましたが、高齢者が安心して長生きできるためには、介護・福祉分野においても同様なことが言えると思います。
◆「職種転換」が容易でない事由
 世界同時不況の直撃を受けたわが国内においては、各メディアが人材不足を解消するには「介護・農業・林業」分野に人材をシフトすべきである、と盛んに「雇用のミスマッチ」が謳われていますが、実際、非正規労働者削減人数が全国第1位の愛知県では、「合同求人フェア」を開催(2/14)するも来場者(160名)の半数以上が大学3年生であったという結果で、福祉事業者の思惑は外れた形になりました。押しなべて、人材確保に意欲を燃やしている介護・福祉事業者の意に反した結果を招いているのは、当ブログ記事(2/12日付)で述べたとおり、非正規労働失業者の立場からすると、介護・福祉分野への「職種転換」が容易でないことに起因しているものと考えます。なぜなら、介護・福祉分野に従事するための資格取得や低賃金等の問題の他、とくにこれまで工場で機械組立や修理作業等に従事してきた非正規労働者は、基本的にコミュニケーションが苦手な人も多いという要因も否定できないのです。勿論、介護・福祉分野の雇用対策はまだ始まったばかりです。
◆「安心と希望の介護ビジョン」では
 こうした現実に直面する中、過日、厚生労働省は2025年を見据えて取り組むべき施策として「安心と希望の介護ビジョン(平成20年11月20日)」を提言しました。その骨子の一つである「3.介護従事者にとっての安心と希望の実現、(3)介護従事者の確保・育成」から抜粋すると、《○潜在的介護福祉士等の掘り起こし、現場復帰に向けた再研修の実施。○フリーター等の介護未経験者を積極的に雇用する事業者への支援など、介護未経験者への就業支援。○福祉人材ハローワーク(仮称)の創設など、人材確保支援の強化》等が挙げられます。具体的にはホームヘルパー(訪問介護員)を例に挙げ、《研修修了者は326万人(2006年度時点)に上っているが、2007年度の介護関係職種の離職率21.6%は、全産業の平均15.4%(2007年度)を上回って》おり、《また、介護福祉士資格保有者(47万人(2005年))の4割(20万人)が介護等の業務に従事していない潜在的介護福祉士となっている。》と、環境整備に取り組む必要性を主張しています。このように、介護従事者一つを取り上げてみても、《雇用環境が悪く、ワーク・ライフ・バランスが難しく、負担の大きい勤務となっていること、介護分野でのキャリアアップが見えづらいことなどが要因として考えられ》ています。
◆中・長期の「雇用創出プラン」を
 これらの雇用環境を改善していくために、○介護従事者の処遇に関する情報の積極的な公表推進、○継続教育の充実、○介護報酬の設定、○新規人材の育成等に取り組む方針が表されていますが、人材不足は介護分野のみならず、医療・福祉分野も然りで、人材育成は中・長期の展望を持って臨む必要があると考えます。前掲の当ブログ記事(2/12日付)で述べたとおり、大量の非正規労働者削減という厳しい現実に臨んでいるのを契機とし、当該分野における長期雇用を前提として、地方自治体が各県立高校に介護や福祉科を創設するのが望まれます。これは長期観点からすれば「少子高齢社会」への対応であり、中期観点では「人材育成」にほかありません。メーカーに例えるなら「海外生産の内製化」に相当し、減少進行する「生産労働人口」を活かしていくには、充実した教育訓練を前提とする人材育成は自家発電となり、「雇用創出(福祉雇用)」に繋がるものと考えます。厚労大臣は閣議後記者会見(2/17)で次のように述べています。“介護はプロに任せましょう。家族は愛情を”と。人材育成は「急がば廻れ」で、非正規労働失業者の雇用対策もここから創出できるのではないでしょうか。
※1)「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」国立社会保障・人口問題研究所公表資料。
参考:「住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数(平成20年3月31日現在)調査結果」総務省。厚生労働省老健局公表資料。