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2008.05.09

労災発生状況と関係指針等の認知を (請負シリーズ9)

◆交通事故死者数・自殺者数を凌ぐ労災死傷者数 
 標記テーマに反して唐突ながら、交通事故死者数は年々減少し、昨年は54年ぶりに5,744人(平成19年データ:警察庁交通局資料)で、反面、自殺者数は年々増加傾向で32,155人(平成18年データ:警察庁統計資料)でした。ここで、平成18年における「労働災害発生状況(死亡災害及び休業4日以上の死傷災害)」※1)をみると、全産業合計で121,378人でした。
 冒頭の死者数と労災死傷者数の単純比較では当然無理がありますが、労働災害の死傷者数は、前二者と比べ、著しく大きな数値だということを認識していただきたいのです。因みに、業種別の死傷者数をみると、その多い順(占率20%以上のみ)に、①その他(内訳トップは、卸売業又は小売業)46,614人(占率38.4%)、②製造業:29,732人(同24.5%)、③建設業:26,872人(22.1%)で(同3業種は前年も同順位)、前年と比較すると、製造業と建設業が各々1.1%、1.2%で微減に止どまり(その他は3.8%増)、全体では横バイ(0.9%増)という結果でした。
 過去の推移※2)をみると、請負事業者の労働災害発生件数は増加傾向で、休業4日以上の労働災害(121,378人:平成18年)のうち、食品・金属・木材加工用機械やコンベア等の機械による労働災害の発生状況は約3割(29.4%。35,678人)を占めており、とくに製造業における割合が高く、機械災害の防止対策が重要課題になったという経緯があるのです。
◆周知されていない「機械包括的安全基準指針」
 では、実際に請負事業者が使用する機械設備の所有や管理状況※3)はどうかというと、発注者が所有しているのが9割を超え、請負事業者の多くが有償で借り受けています。また、機械設備全般の管理は発注者が行い、請負事業者が借り受けている機械設備の補修についても、所有者である発注者が行っているのがほとんどという現状です。そこで、機械の安全対策を進めるため、(A)「機械の包括的な安全基準に関する指針(平成13年6月)」が公表されたのですが、その周知状況※4)は悪く、全体数値で84.1%の人が「当指針を知らない」のです。当指針は、すでに全面的に改正(厚生労働省労働基準局長通達。平成19年7月31日。基発第0731001号)されているにもかかわらずです。
◆請負人の労災発生率は高い
 このような労災状況を踏まえ、請負人の労働災害発生率が元方事業者のそれと比較して高いのは、①関係請負人は、設備の修理、製品の運搬等、危険・有害性の高い作業分担の機会が多く、また、②作業場所が元方事業所の事業場構内が多いため、関係請負人の自主的な努力のみでは災害防止の実効性を上げることはできないという考えに基づき、(B)「『労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)』等の一部を改正する法律(平成17年法律第108号。平成18年4月1日施行)」により、製造業の元方事業者に作業間の連絡調整の実施等が義務付けられたのです。
 また、これに伴い、元方事業者への一方的な負担に止どまらず、関係請負人も含めた事業場全体にわたる安全管理を確立するため、造船業を除き、(C)「製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針(平成18年8月1日付。基発第0801010号)」が策定されていますので、以下に、前記(C)の骨子を列記しました。元方事業者のみならず、関係請負人の皆様を含め、改めて関係指針等を認知のうえ、指針に基づいた措置を行っているか常時確認して取り組むことが肝要です。
◆「製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針」
 ①安全衛生管理体制を確立するとともに、発注者との連絡等を行う責任者を選任すること。②作業間の連絡調整の措置や合図の統一等を実施すること。③法令に基づく安全衛生上の措置を講ずることはもとより、危険性又は有害性等の調査を行い、これに基づいて自主的な安全衛生対策を講ずること。
※1)「平成18年における労働災害発生状況(確定)」厚生労働省労働基準局資料。
※2)「平成12年度労働安全衛生基本調査結果速報」厚生労働大臣官房統計情報部。
※3)「職場における業務請負に係る安全衛生管理の実態に関する調査報告書」中央労働災害防止協会。
※4)「『機械の包括的な安全基準に関する指針』認知の有無及び機械設備を購入する際の優先の有無別事業所割合(企業規模・事業所規模・産業):労働安全衛生基本調査平成17年事業所調査」厚生労働省統計調査別公表データ(2005年)。
参考:「派遣元責任者必携2007年版Ⅱ労働者派遣法(日本人材派遣協会編著)」社)財形福祉協会。「業務請負・労働者派遣の安全衛生管理(木村大樹著)」中央労働災害防止協会。