派遣&請負の情報サイト

人材派遣や請負そして厚生労働省(労働局)の最新情報を発信しています。

メニューを開く
メニューを閉じる

2008.04.22

「2007年問題」は消滅したのか

 60歳の定年退職者が大量排出されるという、所謂「2007年問題」は昨年のこととなりましたが、当問題について、「団塊の世代はどこへ行く」というテーマで、布施克彦氏(本人は「団塊の世代」。ノンフィクションライター)が連載※1)していますのでご紹介します。要するに、著者は、「2007年問題は、目立った社会の動きが起こらないままに過ぎていき、多くの団塊の世代は当面、従来勤めてきた職場で働き続けるという、安直な道を選択した」と述べています。一世風靡した「団塊の世代」の生まれ年は、1947(昭和22)年~1949(昭和24)年の世代に亘るのですが、「2007年はその第1陣(同氏)」に過ぎないと。ならば、2008年以降の第2・第3陣の行方はどうなるのでしょうか。

 ここで改めて、「団塊の世代」を含む「1946(昭和21)年~1950(25年)生まれ」の総人口を「年齢別人口データ(2005年国勢調査)」※2)で見ると、1,025万5,164人で、その前後の年齢層(①約854万人:昭16~20年生まれ。②約879万人:昭26~30年生まれ)の総人口と比較すると、各々①約171万人、②約146万人の差があり、「団塊の世代」を含む年代層の総人口が突出しているのがわかります。

「団塊の世代」について、とかく2007年までは、消費面で退職に伴う大きな購買力が見込まれるとか、余暇を楽しむお客が増えて市場が活性化するとか等々、企業にとっては、その取り込みが大きなビジネスチャンスになると言われてきた経緯があります。しかし、退職金を持った定年退職者で金融機関等に行列ができているというニュースを耳にする訳でもなく、米国で端を発した「サブプライムローン問題」の影響で、経済社会全体は混沌とした様相を呈しているという現実です。また、ビジネスチャンスを生むと期待された「団塊の世代」に関するアンケート調査によると、「約8割の人が60歳を過ぎてからも仕事を持ち続けたいと希望している(労働力調査)」結果が出ており、「団塊の世代」の意思がそのとおり優先されると仮定するならば、第2・第3陣の定年者の大量排出も無いと予測されることになります。

実際のところ、団塊世代の定年後の労働意欲云々のみならず、「改正高年齢者雇用安定法(2004年12月1日施行)」の「高年齢者の安定した雇用の確保等を図るための措置」が、問題年の直前年に施行(2006年4月1日)されたことも大きく影響したのではないでしょうか。当改正による高年齢者雇用確保措置は、法定義務化年齢(60歳定年を迎える労働者の年月期間指定)に合わせ、男女同一で、2013(平成25)年4月1日まで、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢の段階的に雇用延長の年齢を引き上げていくよう事業主に義務づけられている点が注目され、「団塊の世代」を含む働く中高年齢者の雇用延長に焦点が当てられました。

となると、「団塊の世代」の第2・第3陣が、第1陣同様に60歳の定年を延長して65歳を迎えるのが、各々2013(平成25)年・2014(平成26)年に当たり、この点について同氏は、「2007年問題を『2012年問題』に再設定するとか、団塊世代の『65歳一斉定年説』とか、世の中はそれほど単調には動いていない」と述べています。つまり、「団塊の世代」の今後は、これまで「縁取ってきた一斉横並びの枠がはずれた」ので、「その本性を現す時が近づいている」と結んでいます。        

2012年まではあと4年ですが、その期間を長いとみるか否かはさておき、いずれにしても、熟練した技術や様々な経験を持つ「団塊の世代」は、今後の雇用延長により新たな労働力として期待されます。そして、少子高齢社会が進行する中、「団塊の世代」に匹敵する人口を擁するのは2012年に37~41歳を迎える世代で、即ち、「団塊の世代」の子の年齢層(当調査時点で30~34歳の年齢層。総人口:約975万人)が、次代の大きな労働力として機能することになるでしょう。

参考:※1)「月刊人材ビジネス2008年4月号」株)オピニオン。※2)「2005年(平成17年)国勢調査時系列データ」総務省統計局。