2011.06.25
所謂「下請法」の“3条書面”について
◆取引対象は「4つの委託内容」
下請取引の公正化及び下請事業者の利益保護を目的として制定された『下請法(下請代金支払遅延等防止法。昭和31年6月1日法律第120号)』において、その取引対象は、次の4つの委託内容が規定(H15/6/18法律第87号。H16/4/1施行)されています。それは、(1)「製造委託(4タイプ)」、(2)「修理委託(2タイプ)」、(3)「情報成果物作成委託(3タイプ)」、(4)「役務(サービス)提供委託」です。
◆親事業者の「4つの義務」
ここで、下請法に規定されている「親事業者の義務」について確認しておきたいと思います。それは、(1)「書面の交付義務」、(2)「支払期日を定める義務」、(3)「書類の作成・保存義務」、(4)「遅延利息の支払義務」の4つの義務が課されています。
◆「3条書面」に記載すべき具体的事項
とりわけ(1)「書面の交付義務」については、発注の際、“下請法第3条に規定する書面(3条書面)”を速やかに交付しなければなりません。3条書面に記載すべき具体的事項は、同法規則(※1)に規定されており、下記のとおりです。
(1)親事業者及び下請事業者の名称(番号、記号等による記載も可)
(2)製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3)下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう、明確に記載する。)
(4)下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される記事又は期間)
(5)下請事業者の給付を受領する場所
(6)下請事業者の給付の内容について検査をする場合は、検査を完了する期日。
(7)下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが、算定方法による記載も可)
(8)下請代金の支払期日
(9)手形を交付する場合は、手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
(10)一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払可能額、親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
(11)電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
(12)原材料等を有償支給する場合は、品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日、決済方法
(※1)『下請代金支払遅延等防止法第三条の書面の記載事項等に関する規則』(平成15年12月11日公正取引委員会規則第7号。最終改正・施行:平成21年6月19日公正取引委員会規則第3号)
◆“印紙税法上の課税文書”となる場合
前掲「3条書面」の様式に制約はありませんが、当該書面が印紙税法上の課税文書に該当するか否かについては、親事業者と下請事業者との間における請負契約等の成立を証する目的で作成する文書に該当するか否かによって判断されることとなります。つまり、例えば、単なる「発注書」に相当する書面であれば、下請契約の成立を証明する文書には該当しない為、課税文書には非該当ということになります。しかし、下請事業者が署名または押印の上返送する場合、あるいは「承諾した」旨の記載をした上で返送する場合には、発注書に対して「承諾文書(請書)」を作成・交付したこととなるので、当該「請書」が印紙税法上の課税文書となり、下請事業者が印紙税の納税義務者となりますので留意してください。
【ご参照】
●ブログ記事(09/7/24日付)
:『下請法における「第3条書面交付義務」の留意事項について(請負シリーズ39)』。
●ブログ記事(08/5/16日付)
:『下請けは受注時の明確な書面が重要(請負シリーズ13)』。
【資料】公正取引委員会公表資料。