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2009.03.18

全国ホームレスの実態調査結果について

◆ほとんどが「男性ホームレス」
 「ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果」※1)によると、全国のホームレス数(平成21年1月実施)は合計で1万5,759人(対前年98.4%)と発表され、前年横バイでした。これは目視による調査のため、防寒具等を着込んだ状態等により性別が確認不能の「不明者」も含まれています。ホームレスの特長は「男性」がそのほとんど(占率:92.4%)を占めていますが、今年1月時点の調査なので、この度の「派遣切り」が大きく影響したのではないかと推測しましたが、意外に少ない実数と捉えました。
◆ホームレスは「全国504市区町村」に分布
 当該調査では、ホームレスを「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所として日常生活を営んでいる者」と定義※2)しており、ホームレスが確認された自治体は、昨年調査と同様の占率結果で約3割弱(約28%:504市区町村)でした。上位5位の都道府県は、(1)大阪府:4,302人、(2)東京都:3,428人、(3)神奈川県:1,804人、(4)福岡県:1,237人、(5)愛知県:929人と、大都市を擁する都道府県に集中しているのがわかります。
 昨年の世界金融危機勃発より、厚労省は非正規労働者削減数についての調査結果を公表していますので、この上位都道府県を併せて見ると、合計:3万7,881人(第4回調査結果)で、その占率は24.0%です。前記5都道府県におけるホームレス総数に対する占率:74.2%と比較すると大きな差があります。この結果から、大都市周辺における大量の非正規労働失業者がホームレスに直結していると断定することはできません。実際にホームレスが起居する場所は、これまでの調査結果と大差無く、「道路」、「駅舎」等で増加をみるものの、「都市公園」及び「河川」の合計:9,196人(対占率58.4%)で、都市の水の有る場所での生活が主のようです。
◆「政令指定都市等で7割以上」を占める
 (a)ホームレスが起居する上位5都道府県の占率と(b)非正規労働失業者数の同都道府県の占率に大差があると前記しましたが、これは前者(a)が、その生活基盤が都市公園や河川等のある主に大都市に必然的に集中していることに要因があり、後者(b)は全国各地で大量輩出されたことに因る占率差と解釈しました。即ち、ホームレスの分布は、東京都23区及び政令指定都市における合計が1万1,245人で、ホームレス全体の71.4%とその大半を占めていることから明らかです。因みに、ホームレス数が500人以上の上位都市(特別区を含む)及び人数は、(1)大阪市:3,724人、(2)東京都23区:3,105人、(3)福岡市:969人、(4)横浜市:697人、(5)川崎市:691人、(6)名古屋市:641人の6都市で、ホームレスの累計人数は9,827人(62.4%)となっています。
◆「ホームレス支援」一筋の牧師
 過日のTVドキュメンタリー番組(3/10)で、ホームレス支援に約20年間従事されている男性牧師(45歳。滋賀県大津市出身)が紹介されました。視聴された方もいらっしゃると思いますが、牧師ご本人曰く、《自分(NPO法人北九州支援機構を運営。5施設、スタッフ80名)がホームレスの「ホーム」になり、支援ではなく「独りの人間を助ける」という精神》に基づいて活動されているとのことでした。「ハウジングプア」と表現される昨今ですが、当該牧師は「見えない(潜在する意と解釈)ホームレス」には、所謂「ネットカフェ難民」の存在があると言われます。要は、《ホームレスは「ハウスレス」であり、かつ「絆を失った人々」》で、当該牧師が毎日、昼夜を分かたず、街中のホームレスに一人ずつ声かけされている活動には敬服しました。
 牧師の携帯必需品は、(1)懐中電灯、(2)ヒアリング用ノート、(3)フェルトペン(マジック)、(4)封筒、(5)ホームレスに手交すべく事前に用意された「あなたへ」と題する手紙等で、とくに手紙は“あなたは独りではない”という趣旨の文面が記されており、自殺防止の意図もあるものと推察しました。牧師は自分が運営する施設にホームレスを入居(6ヶ月間の期限)させ、自立まで日常生活をケアされているのです。明るい性格で逞しい牧師は、“出会いで人は変わる!人はいつか変わる!”をモットーとされています。当該牧師が活動されている北九州市の実際のデータ(厚労省)を見ると、ホームレス数は「421人(03年)」から「149人(09年。政令指定都市別の多い順で第9位。)」と約6割以上減少しており、当該牧師の貢献も影響しているものと思います。この年度末に臨み、「派遣切り」に伴う大量のホームレスが出ないことを祈る次第です。
※2)ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(平成14年法律第105号)。
参考:※1)「ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果」平成21年3月9日付:厚生労働省社会・援護局公表資料。