2011.07.26
★“地デジ”完全移行後の「名古屋テレビ塔」の生き残り策は市民提案と再開発の一体開発を
◆ついに迎えた“地デジ放送”完全移行
月日の経過は早いもので、ついに「地上アナログ放送(470~770MHz)」終了の日を迎えてしまいました。この7月24日より、UHF(極超短波:470~710MHz帯)を利用した“地上デジタルテレビ放送(13~52ch)”に完全移行(但し、東北3県を除く)したのです。当移行で空いたUHFの一部(710~770MHz)は、携帯電話サービスや次世代高度道路交通システム(ITS)に活用され、VHF(超短波:90~222MHz)は消防・警察等に利用される予定です。
◆電波塔の役目を終える「名古屋テレビ塔」
“地デジ化移行”に関わるブログ記事(下記【ご参照】)を掲載してから丁度1年経ちますが、冒頭から「地上アナログ放送」終了日を迎えたことを残念そうに述べたのは、個人的に“地デジ化移行”に乗り遅れた訳でもなく、「名古屋テレビ塔(高さ:180m)」を擬人化し、その気持ちを代弁したつもりに浸っているからです。日本初の集約電波塔(及び展望台)として長年に亘って活躍してきた「名古屋テレビ塔」が、なぜその役目を終えてしまうのかについては、下記のブログ記事を改めてご参照いただければ幸甚です。
◆故「内藤多仲」氏設計の“電波塔3兄弟”
電波塔の役目を終えるのは「名古屋テレビ塔」のみならず、自立式電波塔としては世界一の超高層タワー「東京スカイツリー(高さ:634m)」の年内竣工予定(2011/12月。開業は12/5/22予定。)を控え、電波塔(及び展望台・科学館)としての役目を終えることになる「東京タワー(高さ:332.6m)」も同じ運命の下に置かれているのです。工学博士だった故 内藤多仲(ナイトウ タチュウ)氏が構造設計した「名古屋テレビ塔(竣工:1954年)」を“長男”とするならば、同氏設計の電波塔(及び展望台)「さっぽろテレビ塔(高さ:147.2m。竣工:1957年)」は“次男”であり、同じく“三男”に当る「東京タワー(竣工:1958年)」を含めた3塔は“電波塔3兄弟”と言える建造物なのです。
尚、前記の“長男&三男”の設計については、故内藤博士と共に「株式会社日建設計」が関与されており、施工者は「株式会社竹中工務店」であることを付記しておきます。また、関西で有名な展望台「通天閣(高さ:100m。竣工:1956年)」も同氏設計で、年代順では“次男”に相当するのですが、電波塔ではない為、ここでは“兄弟”の対象としなかったことをお断りしておきます。
◆市長は「取り壊し」を否定
このような血縁(?)関係にある「名古屋テレビ塔」ですから、“地デジ放送完全移行”と共に“長男”の命が絶たれるなどという話は、名古屋市民としてはとても忍びないことです。当該テレビ塔の運営会社は、愛知県と名古屋市が出資(各25%)している第三セクターの「名古屋テレビ塔株式会社」で、建物全体の耐震化を含む大規模改修(再生基本構想)には約35億円を要すると試算されています。これに対し、河村名古屋市長は、《「耐震化も本当に必要なのかどうか確認し、市民の意見も聞いてテレビ塔の活性化策を考えたい」と述べ(6/27)、更に、《「市長としてもまったく取り壊すつもりはない(6/30:市議会本会議回答)」》とのマスコミ報道がなされたので、名古屋市民として一安心したところです。
◆「階段で登った」という市長の思い出
『市長の部屋(名古屋市HP)』を拝見すると、河村名古屋市長(1948年生まれ)は、小学生の頃、「名古屋テレビ塔」には父親と階段で登られたようで、「おそぎゃあで、下向いて歩いたらあかんぞ。上向いて登り続けやぁ!」との会話を回想されています。蛇足ながら、その名古屋弁の会話を翻訳(?)すると、「恐いので、下を向いて歩いたらダメだよ。上を向いて登り続けなさい!」となります。
◆今年57周年の「名古屋テレビ塔」
前述のとおり、「名古屋テレビ塔」の竣工年(1954年)を踏まえると、人間なら今年で“満57歳(6/19竣工)”を過ぎたところです。当時、高層タワーも全く無かった時代に“東洋のエッフェル塔”とも言われた「名古屋テレビ塔」の完成は、さぞや話題になったことと想像しています。とりわけ男女を問わず、テレビ塔の“竣工年に生まれた名古屋市民(現在の該当人口:約2万5,427人※)”は、「名古屋テレビ塔」と共に人生の歴史を刻んで来たという一体感を抱き、その愛着も人一倍大きいのではないかと推測しています。
◆「名駅地区」に負けている「栄地区」の最高路線価
ところで、「名古屋テレビ塔」が所在する地区の路線価(『平成23年分の名古屋国税局各税務署管内の最高路線価(平成23年7月):名古屋国税局』を見ると、平成23年分の最高路線価は「447万円/㎡(対前年▲5.1%):中区栄3丁目(大津通り)」で、名古屋駅前地区(同「581万円/㎡(対前年0.0%):中村区名駅1丁目(名駅通り)」)に負けている現状です。「栄地区」が「名駅地区」に抜かれてから6年が経過したのですが、「名駅地区」が昨年「▲20.2%(平成22年分最高路線価対前年増減率)」から回復(前記)したのに対し、「栄地区」が続落している現実をしっかりと受け止めなければならないでしょう。
◆「フローニンゲン」は“自転車天国”
そこで、「名古屋テレビ塔」が生き残っていく為には、テレビ塔の単体存続策にとどまらず、「名駅地区」に対抗すべく市街地(栄地区)再開発との一体開発が望ましいのではないか考えます。今まさに「エコ生活」時代ですから、例えば、過日のTV報道(NHK)で視聴したオランダ北部の商工業中心都市『フローニンゲン(Groningen:蘭)』の“自転車イチバンの街”づくりは一考に値すると思います。
それは、「フローニンゲン(基礎自治体)」の旧市街地の中心にはテレビ塔ならぬ、「マルティニ教会(高さ:127m)」が存在感を示して建っており、名古屋市と比較すると面積は約4分の1で、人口は約18万5千人の都市ですが、大学生(フローニンゲン大学)も多く、街中に「自転車専用道路(200km超)」が整備され、市街地には“自動車利用を抑制する都市計画”が採られているので、約30万台の自転車がひしめく街として注目されているのです。
◆“新しいオアシス”の誕生を切望
では、名古屋市内はどうかと言うと、これまで「自転車専用歩道」は市内各所にありますが、“自転車専用車線(約800m:中区桜通)”が設けられた(11/6/25)のは初めてで、前掲の「フローニンゲン」とはとても比較にならない段階です。一方、河村名古屋市長が構想されている《道路を公園にする久屋大通公園の大公園化》は、「フローニンゲン」にも通じる街づくりと推測します。従って、「名古屋テレビ塔」を中心とした都心の「セントラルパーク」を含む周辺の地下街は、既存の地上広場(ロサンゼルス広場)と共に拡充してその連続性を確保し、栄地区のコア部分に市民が自転車で集える広場にすれば、約225万人※の名古屋市民が憩う“新しいオアシス誕生”も夢ではないのではないでしょうか。ただ、その一翼を我々名古屋市民も担うつもりで積極的に街づくり提案に参画していくべきと考えます。目指すは、「名古屋テレビ塔」の復活と共に“VIVA 名古屋!”です。
※「公簿人口(11/7/1現在)」:名古屋市の「年令各歳別男女別公簿人口」で、住民基本台帳人口及び外国人登録人口を合算した数値。人口総数には年齢不詳を含み母数としています。
【ご参照】
●ブログ記事(10/8/7日付)
:『★地デジ化移行に伴う“東京スカイツリー”&「名古屋テレビ塔」の明暗』。
【資料】名古屋市HP公表資料。名古屋商工会議所公表資料。名古屋テレビ塔株式会社公表資料。名古屋国税局公表資料。