2014.02.22
★名古屋駅前再開発事業&リニア中央新幹線開業で“サスティナブルな街づくり”を期待
◆主な「新ビル」の名称公表
昨年の当ブログ過去記事【※1】で「名古屋駅前で再開発事業が進行中」等について記しましたが、過日、その主な「新ビル」の名称が決まり、公表されました。当該「新ビル」の名称は、昨年、日本郵便の『JPタワー名古屋』(高さ:195.7m。地上40F/地下3F)が公表(12/20)され、今年、名古屋駅直結の新ビル(JR東海)の『JRゲートタワー』(高さ:220m。地上46F/地下6F)が公表(2/13)されました。そして、三菱地所の新ビルは、名古屋市民の要望に応え、旧名の『大名古屋ビルヂング』(高さ:190m。地上34F/地下4F)が踏襲される模様です。因みに、『大名古屋ビルヂング』の地下には、“中部初の大規模な機械式駐輪場(1,000台分)”が整備【※1】される計画です。
◆「リニア中央新幹線」の工事着工は今秋?
各紙報道によると、名駅前再開発事業の建設工事は、《地下工事の際に壁面の一部が崩落して施工方法の変更が必要》となった為、完成時期が当初より遅れ、新ビルの開業予定は、《2016年11月にオフィス入居開始、2017年4月に高島屋、ホテル開業》と公表(JR東海HP)されています。ただ、2027年を開業目標とする『リニア中央新幹線(JR東海)』は工事着工年(2014年度秋頃の予定)を控えていますが、完成時期の遅延に伴う工事への影響は《「まったくない」(JR東海・山田佳臣社長)》と公表されています。更に、2014年始に《リニア中央新幹線開業にあわせた再開発を最大の経営課題と位置づける(名鉄社長)》という報道に接し、名古屋駅前の再開発事業は個々の新ビル建設工事にとどまらず、これから始まる『リニア中央新幹線』の建設工事と相俟ってより一層大規模な開発へと進行する様相で、“ものづくり”の中京大都市圏に対する皆様の関心度は、日々高まりつつあるのではないかと捉えています。
一方、「尾張名古屋共和国市」構想【※2】を掲げていた(なぜか過去形)河村たかし名古屋市長が、大村秀章愛知県知事と連携提唱の「中京都構想(新都市構想)」については、《「今の時点での、一区切りの方向性」を3月中にもまとめる考え(2/18記者会見:大村知事)》との報道ですが、再開発事業やリニア中央新幹線に係る報道が脚光を浴びている為、一旦、影を潜めているといった感を否めません。
◆検討を重ねる「名古屋駅周辺まちづくり構想」
これらの事業に係る計画は、すでに「名古屋駅周辺まちづくり構想懇談会」にて、回を重ねて検討されていますので、下記にその「骨子(原文抜粋)」をご紹介します。
【目標とするまちの姿】
○ 世界に冠たるスーパーターミナル拠点
【背景・課題】
○ 巨大都市圏の形成と名古屋大都市圏における役割
○ 大都市圏の玄関口としての駅前空間
○ 災害に対する安全性
○ ターミナル駅としての機能
○ まちの魅力と連続性
※但し、下記(基本方針)は、大見出しのみ抜粋。
【基本方針1】 国際的・広域的な役割を担う圏域の拠点・顔を目指す
【基本方針2】 誰にも使いやすい国際レベルのターミナル駅をつくる
【基本方針3】 都心における多彩な魅力を活かし、つないでいく
◆「ターミナルスクエア(仮称)」の新設計画
とりわけ、鉄道に関連して、前掲の「ターミナル駅としての機能」に関して先述すれば、名古屋市は、「約227万人超(2014年1月1日現在)」の人口を擁し、主要駅である「名古屋駅」の1日平均の乗降客数は約115万人(2008年時点)で、概して「全国第6位」という現状です。実際、当該駅に乗り入れている鉄道(記載は順不同)は、(1)名古屋市営地下鉄をはじめ、「あおなみ線(複線・電化・盛土高架)」を運営している第三セクターの(2)名古屋臨海高速鉄道株式会社の他、民間鉄道会社の(3)JR東海(東海旅客鉄道株式会社)、(4)名鉄(名古屋鉄道株式会社)、(5)近鉄(近畿日本鉄道株式会社)の5路線が集中している所謂“ハブ駅”です。前掲の課題のひとつにある「ターミナル駅としての機能」が発揮されているかというと、前記「5路線」の乗り換えの利便性は、決して十分とは言えない現状です。そこで、当該「構想懇談会」で、“ターミナルスクエア(仮称)”※1)の新設計画が挙げられているのです。
※1)複数の交通機関の乗り換えが一目で分かる空間であり、歩行者動線の円滑化や滞留、案内情報サービス等の提供を行う広場(当該「構想≪骨子≫(案)」より抜粋)。
◆各論的課題(私見)
名古屋人(ナゴヤジン)のひとりである筆者は、残念ながら、前記「懇談会」との縁は皆無で、名古屋市に対してパブリックコメントでもしない限り、犬の遠吠えに過ぎません。ここからは、より一層“ローカル色豊か?”な事項について述べることになり大変恐縮ですが、前掲の課題のひとつ「まちの魅力と連続性」に係る事項として、名古屋の「市章(マルの中に「八(ハチ)」)」の数字に因んだと言うのはこじつけですが、下記「8項目」に亘って私見を羅列しましたので、お時間の許す方はご笑覧いただければ誠に幸甚です。
【1】 “歩行者を中心とした駅前広場”を
「名古屋駅の地下街」は、総面積(約8万2,387平方メートル:全国第3位)【※1】で、名古屋駅前を《玄関口にふさわしい風格と賑わいを感じさせる顔づくりを進める(前掲【基本方針1】より小項目抜粋)》のであれば、現状の「タクシー乗降場」として占拠されている地上空間を、“歩行者を中心とした駅前広場”に変貌させることが必要であり、それが曳いては、前記の「ターミナルスクエア(仮称)」の在り方に繋がるものと考えます。
【2】 新たなビジネス・交流拠点となる「ささしまライブ24地区」
さて、ここで筆者が当該再開発事業の“目玉”と捉えているのは、その昔、旧国鉄の「笹島貨物駅」跡地であり、そして皆様ご存知の『愛・地球博(2005年)』のサテライト会場であった“ささしまライブ24地区”【※2】です。この「ささしまライブ24地区」は、「JR名古屋駅」から「笹島(ササシマ)」交差点を経由し、同駅から南方へ約1キロメートル先に位置する「地区(約22.1ヘクタール)」です。そして、そこに至るまでの「歩行空間の再整備(高架鉄道下の騒音はかなり大では?)」が必要ではないかと考えます。
当該「地区」への進出はすでに現在進行形で、ライブホールや国際交流・研修施設(JICA中部国際センター)の他、名古屋市の提案コンペで優秀賞を受賞した私立大学(5学部移転済。収容:約7,000人)の名古屋キャンパスが開校(2012/4/2)されました。今後は、同コンペで優秀賞を受賞したわが国を代表する自動車企業グループ商社のオフィス、ホテル、コンベンション等で構成される「グローバルゲート(仮称)」が建設されます。また、地元の民間放送局(日テレ系)の本社移転、賃貸住宅(大手ハウスメーカー)等が計画されており、まさに“新たなビジネス・交流拠点”と化すのです。
【3】 「名古屋駅」から「伏見駅」までのエリアをどう活性化するか
現実的な課題は、「名古屋駅」から「伏見駅」までのエリア(柳橋~納屋橋~堀川)における具体的振興策が必要ではないかと考えます。課題の中心は、市内中心街を南北に流れる「堀川(延長:16.2キロメートル)」の存在です。すでに「納屋橋」沿いには「親水広場」が設けられ、観光のひとつとして活用されていますが、その実態から、長年“ドブ川”と言われてきた経緯があるのです。そこで、名古屋市は、この2014年度に《堀川周辺のにぎわいづくりのため、中区の「五条橋」~「中橋」間(300メートル)で、ヘドロの浄化実験を実施》し、《親水広場(約160平方メートル)も整備》する計画を公表しました。《透視度は全域で徐々に改善している》との調査結果(名古屋市高年大学鯱城学園環境学科)を踏まえ、また、近未来をも見据え、新たな交通機関のひとつとして「シーバス」等の活用【※1】で「堀川」を活かすことを、是非、検討していただきたいと願うところです。
一方、「伏見駅」から東方に当たる「栄駅」までのエリアは、過去ブログ記事【※1】に記載のとおり、大手デパートをはじめ、公的施設(科学館・美術館)やオフィス街の存在で活性化の材料は豊富である為、“面開発”はゾーニングの再構築等で、相対的には取り組みやすいのではないかと考えます。
【4】 「名古屋テレビ塔」周辺の再開発
続いて、前記「栄駅」エリアにNHK(日本放送協会)の「名古屋放送センタービル」が所在していますが、そのNHKをはじめ、民放各局の“アンテナ撤去後の「名古屋テレビ塔」の生き残り策”については、当ブログの過去記事【※3】に記載しましたので、ご参照いただければ幸いです。因みに、東海3県(愛知・岐阜・三重)の“地デジ電波”は、現在、「瀬戸デジタルタワー」(高さ:245メートル。愛知県瀬戸市)から発信されています。
【5】 名古屋駅西の“浄化作戦”
前掲「名古屋駅周辺まちづくり構想」の課題のひとつに「大都市圏の玄関口としての駅前空間」が挙げられています。それに対抗して大上段から申し上げれば、“大都市圏の名古屋駅西空間(既存の東海道新幹線西側)”の再構築が肝要と考えます。実際、戦後、所謂“駅ウラ”と呼ばれた名古屋駅西側は、豊臣秀吉生誕地(中村区)という縁に因み、現在は「太閤通口」の名称がついていますが、その周辺一帯が対象エリアです。多言は控えますが、“影の社会”の浄化作戦(名古屋駅太閤通口まちづくり協議会)も兼ねているのならば、再開発事業の展開は格好の機会、と邪推しています。
【6】 「駅西」が「駅前」に変わる?
名古屋駅前再開発事業の進行に伴い、近い将来、「駅前」の賑わいはより一層増すであろうと期待されるのに対し、「名古屋駅」の西口から徒歩約3~10分圏内を指す所謂「駅西」は、全く相反する現状と言っても過言ではないでしょう。それにもかかわらず、過日のマスコミ報道によると、「JR名古屋駅西地区のまちづくりを考えるシンポジウム(2013/12/10)」で、《「『駅裏』の印象が強かった駅西地区を、リニア開通後は『駅前』と言われるようにしたい」》との挨拶(名古屋新幹線駅前商工連合会・加藤征二理事長)があったのです。更に、《「名古屋駅の開業以来初めて、駅西地区の発展が始まる(共立総合研究所・江口忍副社長)」》との力強いご意見を拝見し、「駅西」の近未来に大いなる希望を垣間見る思いに浸ったのは筆者だけでしょうか。
【7】 「駅西銀座通商店街」の振興策を
蛇足ながら、「名駅(メイエキ)」という地名は略称ではなく、公式に「住所表示(地名)」が存在しますが、名古屋市民は、日常的に「名古屋駅」を略して“名駅”と呼んでいます。その「名駅」の西側、即ち、既存の東海道新幹線「名古屋駅」西口からアクセス(徒歩3分圏内)の良い立地に「名古屋駅西銀座通商店街(商店街組合会員数:57)」が存在します。唐突ですが、当該商店街は、愛知県内全域で毎夏8月に開催される所謂“にっぽんど真ん中祭り(通称:どまつり。3日間の観客動員数は約200万人:主催者公表)”のサテライト会場のひとつにもなっており、イベント開催時に全国から集まった人々(220チーム約23,000人)のうち、約2,000人(20チーム程)に上る老若男女が当該「商店街」の道路上でダンスを披露し、それを見学(筆者もそのひとり)するために大勢の人々が集まり、一時的に賑わうことはあるのです。しかし、当該商店街に「歩道(歩道上のみ屋根付。今年2月撤去)」が設けられていたものの、日常の人通りは、例えば、関東で有名な「戸越銀座(3つの商店街で構成:全長1.3キロメートル。路側帯有り、屋根なし)」の比では毛頭ないことが大いに残念です。
と言うのも、当該商店街の現状は、所謂“しもた屋”と「有料コインパーキング」が散見され、各商店の連続性は日々失われつつあるからです。その背景のひとつに“個人商店の後継者問題”があります。勿論、こうした商店街の悩みはご当地のみならず、全国の地方都市においても、「商店街に新たなアーケードを建設する資金がない」とか、逆に、「老朽化したアーケードを撤去する費用も捻出できない」等、現実問題に直面している商店街【※4】を散見する昨今です。実際、当該商店街の「歩道上アーケード」の撤去工事が実施(2014/2月)され、店前の空間が明るく開けたものの、個々の老朽化した建物が露わになり、景観悪化の感は否定できません。ただ、当該工事の進捗を見ると、今度は新たに「監視カメラ付」で、サッカーボールを空洞にしたような輪郭の洒落たデザインの「街路灯」が設置され、当該エリアにおける防犯対策も講じられる模様と推察しています。しかし、「名古屋駅西銀座通商店街」の活性化にどう臨むのかは、直面する課題のひとつと考えます。このまま、不揃いな商店街になることを懸念するばかりです。
【8】 「特定都市再生緊急整備地域」の西端の境界
また、現在、名古屋市の『名古屋駅周辺・伏見・栄地域整備計画』では、「特定都市再生緊急整備地域」【※2】を包含する「都市再生緊急整備地域」が指定されています。その昔、河童が存在していたとされる「笈瀬川」を埋め立ててできた道路の為、現在もその面影を残して蛇行している「笈瀬通(オイセドオリ)」が、当該「整備地域」の西端の境界になっています。この「笈瀬通」から南方に位置する「ささしまライブ24地区」(前掲「課題2」ご参照。【※2】)と結節する道路が整備される計画で、すでに工事は一部進行しています。ただ、筆者が「名古屋駅西」に拘泥する事由は、前掲の「駅西銀座通商店街」は当該「整備地域」の対象外の為、その衰退ぶりを嘆くのみならず、管轄地域内に「名古屋駅」を擁する「中村区役所」が入居している建物(都市再生機構)の老朽化に対しても、その「移転または建替え計画」の有無等に思いを馳せ、個人的な心配は益々とどまるところを知りません。
◆“サスティナブルな街づくり”を期待
前述の「都市再生緊急整備地域」に対する期待は、あくまでも筆者の個人的願望に過ぎません。“「駅西」を「駅前」に引けを取らない程度までに(前掲)”等とは決して欲張りませんが、名古屋駅前再開発事業及びリニア中央新幹線の両工事に至る好機だからこそ、「名古屋駅」の東西エリアをどのように繋ぐかという問題にとどまることなく、“名古屋駅西エリアの活性化”により一層取り組む必要があるのではないかと考えます。リニア中央新幹線開業で、「名古屋駅」を“世界に冠たるスーパーターミナル拠点(前掲)”へと変貌させるのであれば、当該事業に関わる皆様には、「名古屋駅」を中心に半径約1キロメートルの地域をターゲットとして、「駅西」の再開発も重視していただきたいと願うばかりです。それがまさに、近未来名古屋の“サスティナブルな街づくり”への第一歩と考えるからです。
【ご参照】
【※1】ブログ記事(2013/7/6日付)
:『★2027年「リニア中央新幹線」先行開業!名古屋の中心市街地は“面開発で賑わいある街づくり”を』。
URL http://www.jsbb.jp/st/24168/
【※2】ブログ記事(2012/2/11日付)
:『★偉大なる田舎「名古屋市」は“400万都市”に変貌できるのか』。
URL http://www.jsbb.jp/st/14692/
【※3】ブログ記事(2011/7/26日付)
:『★“地デジ”完全移行後の「名古屋テレビ塔」の生き残り策は市民提案と再開発の一体開発を』。
URL http://www.jsbb.jp/st/8538/
【※4】ブログ記事(2010/9/11日付)
:『★「商店街」が生き残るために何が必要か』。
URL http://www.jsbb.jp/sj/3588/
【資料】『中央新幹線環境影響評価準備書について(平成25年11月5日:東海旅客鉄道株式会社)』、『名古屋駅周辺まちづくり構想≪骨子≫(案):平成25年11月 名古屋市)』、名古屋市HP「市政情報」公表資料、各紙等。