2010.08.28
改正臓器移植法 あなたは『臓器提供意思表示カード』を持っていますか?
◆法改正後の移植実績は「第3例目」
「改正臓器移植法」※1)の全面施行(7/17)から1ヶ月以上が経過し、“家族承諾”による脳死移植はすでに「第3例目」※2)となりました。この度の法改正は、《日本で臓器の移植希望登録をしている人はおよそ1万3千人いる》にもかかわらず、これまでは《臓器の提供が少なく、数多くの方が移植を待ちながら亡くなられている:(社)日本臓器移植ネットワーク》との背景があったことに基づくものと考えます。法改正後、堰を切ったように増加した移植実績には、ただ驚嘆するばかりです。
◆心停止に至る“脳死”
実際のところ、「脳死」について日頃真剣に考える機会は決して多くはないと思いますので、即、「あなた自身の覚悟はできていますか?」等と迫られると戸惑う人もいるかもしれません。確かに《脳死は、脳全体の働きが無くなり、人工呼吸器などの助けがなければ心臓が停止してしまう状態です。脳死になると、どんな治療をしても回復することはなく、心停止に至ります(心停止までに、長時間を要する例も報告されています)》と、前掲の移植ネットワークは説明しています。続けて、《脳幹の機能が残っていて自分で呼吸できることが多く、回復の可能性がある植物状態とは全く別のもの》であると。
そして、当ブログ執筆中、脳死判定の「第4例目(8/27)」が公表されました。脳死の《女性は生前に臓器提供意思カードに提供意思を記入していた。》との報道ですから、臓器提供されれば、臓器移植法施行(97年)以降で「90例目」となります。
◆“意思表示(口頭・書面)無し”の事例
法改正になったとは言え、注視するのは「第2例目(ドナー男性)」と「第3例目(ドナー女性)」の場合です。両者共に、《家族は「臓器提供について本人と話をしたことはない。」》とのことで、“口頭・書面の両方とも本人の意思表示は無かった”という点です。当ブログ記事※1)に掲載のとおり、この度の法改正では、「本人の臓器提供の意思が不明の場合でも、家族の承諾があれば臓器提供が可能」となった訳ですから、何ら違法性を問われることはありません。
◆死後は家族におまかせ?
勿論、“臓器提供”で尊い人命が救われることに異論を唱えるのでは毛頭ありません。遺族が「もう助からないのであれば、どこか体の一部が生きていればうれしい。元気な体なので、たくさんの人の役に立ってほしい(第2例目)」、また、「誰かの役に立てたい。体の一部がどこかで生きていてくれたらうれしい(第3例目)」と言われるお気持ちは察するに余りあります。こうした遺族の率直な気持ちから発する臓器提供事例は、今後も増えるものと推測します。では、今現在元気な自分自身の心構えとしてはどうですか。“あなた自身の死後は家族にオマカセでいいのですか?”と、改めて問いたいのです。
◆CVSでも入手できる新『カード』
臓器提供に関しては、脳死の議論もあるでしょうし、家族と生前に話し合うことも必要でしょう。しかし、そういう機会をすぐに持つことができなくても、誰もが容易に『臓器提供意思表示カード』を携帯することはできます。すでに新しくなった同『カード』は、法改正後に私自身も病院及びCVSへの複数個所訪問で実際に確認してきましたが、順次設置※3)されています。勿論、「旧カード」も有効ですし、法改正全面施行後の現在は、「運転免許証」や医療保険の「被保険者証」等に「意思表示欄」が設けられることになりました。また、インターネットで登録も可能です。
◆肝要なのは“自己の意思表示”
臓器提供は《あくまでも善意に基づく無償の提供》で、《臓器提供者の方には提供に関する費用は一切かかりません》。『臓器提供意思表示カード』の現物を見たことがない人は、是非この機会に自分の目で確認してみてください。同カードの項目で、「私は、臓器を提供しません。」を選択することも可能なのです。「親族優先」の意思表示もできるのです。先ずは、あなた自身が、“自己の意思表示”をしておくことが、今後の人生を生きていく上で肝要と思います。
※1)【ご参照】
●当ブログ記事(10/7/17日付)
:『厚生労働省 「改正臓器移植法」が本日より全面施行されます』。
※2)【第1例目】:8/9、【第2例目】:8/19、【第3例目】:8/22。
※3)都道府県市区町村役場窓口、保健所、運転免許試験場(センター)、免許更新可能な警察署、CVS(コンビニエンスストア)等。但し、CVSは、「セブン・イレブン」、「ローソン」、「サークルkサンクス」、イオングループ(「ジャスコ」、「サティ」、「マックスバリュ」)、「イトーヨーカドー」。
参考:社団法人日本臓器移植ネットワーク公表資料。