2008.07.31
あなたも救命者の一人
◆重要なのは呼吸停止後3分まで
最近は「無差別殺人事件」の連続発生で殺伐としていますので、今回は「人命救助」の話をしたいと思います。人が突然倒れた場合等、停止した心臓や呼吸機能を蘇(よみがえ)らせる応急手当を「心配蘇生法」と言い、呼吸停止から2分以内に心肺蘇生法を始めれば約90%の確率で命を救えますが、3分後の死亡率は約50%、5分後では約25%、10分後ではほぼゼロに近くなってしまうのです。平常時に救急車が現場到着できるのは、119番通報を受けてから平均約5分~約6分強を要します。脳の神経細胞が酸素無しで維持できるのはわずか3分程度と言われていますので、いかに早く処置を開始するかが救命の鍵となります。
◆身近になった「AED」
ここで登場するのが、所謂「AED(Automated External Defibrillator)」と言われる「自動体外式除細動器(じどうたいがいしきじょさいどうき)」※1)です。突然心停止状態に陥った時、心臓に電気ショックを与えて、正常な状態に戻す医療機器で、コンピュータを内蔵し、電極を胸に貼ると心電図を自動的に解析し、心室細動※2)か否かを判断し、機械が電気ショック(通電)を指示してくれます。2004年7月からは国内において一般市民による使用も認められましたので、救急医療現場は勿論のこと、公共施設等、様々な状況下で使われるようになってきました。AEDが多数配置されることもさることながら、救急隊員や医師が駆けつけるまでの数分間が救命の別れ道ですから、一人でも多くの人が「AED」を活用できることが望ましいと思います。
◆「AED」の操作は簡単
「AED」で救命体験のある人や知識を習得された人は十分ご存知でしょうが、実際の操作は、「AED」の発する指示音声に従ってボタンを押す等簡単な操作でできますので、医療知識の無い人でも容易に実行できます。正常な人に「AED」の電極を装着してスイッチを入れた場合でも人体に悪影響は及ぼしませんし、万一の事態になっても、一般人の善意の救命行為は罪に問われません。「AED」が身近に無い場合は、周知の「心肺蘇生法」による人命救助は有効です。周囲の人に「誰か救急車を呼んでください」と助けを求め、複数で対応することが望ましいです。心肺蘇生法は、全国最寄りの消防署や日本赤十字社等が「普通救命講習会」を定期開催していますので、機会があれば是非習得してみてください。
◆人を救命するには
交通事故・火災・地震等々、不慮の事故で人命救助が必要な緊急事態は、いつどこで起きるかわかりませんので、人を救命するには、まず自分自身の命が有ることが第一条件ということを念頭に置いてください。蛇足ながら、私は「防災士」※3)有資格者ですが、地震学を含む防災全般に関する専門的な勉強をしたい人は「防災士研修講座(日本防災士機構)」※3)が開催されていますので、インターネットで最新情報をご確認のうえ、防災知識習得の機会としてお役立てください。
※1)細動:心筋が正常な収縮、拡張を行わず、各部分がバラバラに活動する状態。
※2)心室細動:突然心臓がリズミカルに拍動しなくなり、心室の筋肉がバラバラに興奮している状態で、自然に回復することはほとんどありません。尚、心室頻拍は致死性の不整脈の一種。
※3)右記すべての修了が認証条件:①自宅学習、②スクーリング学習、③普通救命技能認定、④学科試験。
参考:特定非営利活動法人AED普及協会概要資料。日本メドトロニック株式会社資料。「命を守る防災ハンドブック(毎日新聞大阪本社総合事業局編)」日本防災士会。