2019.02.04
2020年4月に施行される「同一労働同一賃金」の概要と『ガイドライン』(抜粋)
◆「同一労働同一賃金」の概要
本ガイドラインは、正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金の実現に向けて策定するものです。
同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのかを示しています。
この際、典型的な事例として整理できるものについては、問題とならない例・問題となる例という形で具体例を付しています。
不合理な待遇差の解消に向けては、賃金のみならず、福利厚生、キャリア形成・能力開発などを含めた取組が必要であるため、これらの待遇についても記載しています。
本ガイドラインについては、関係者の意見や改正法案についての国会審議を踏まえ、労働政策審議会における議論を経て、最終的に確定されたものです。
◆「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要①
(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)
○ このガイドラインは、正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(パートタイム労働者・有期雇用 労働者・派遣労働者)との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差 は不合理なものでないのか、原則となる考え方と具体例を示したもの。
○ 基本給、昇給、ボーナス(賞与)、各種手当といった賃金にとどまらず、教育訓練や福利厚生等についても記載。
○ このガイドラインに記載がない退職手当、住宅手当、家族手当等の待遇や、具体例に該当しない場合についても、 不合理な待遇差の解消等が求められる。このため、各社の労使により、個別具体の事情に応じて待遇の体系について 議論していくことが望まれる。
▲不合理な待遇差の解消に当たり、次の点に留意。
• 正社員の待遇を不利益に変更する場合は、原則として労使の 合意が必要であり、就業規則の変更により合意なく不利益に変更する場合であっても、その変更は合理的なものである必要がある。ただし、正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇 差を解消するに当たり、基本的に、労使の合意なく正社員の待 遇を引き下げることは望ましい対応とはいえない。
• 雇用管理区分が複数ある場合(例:総合職、地域限定正社 員など)であっても、すべての雇用管理区分に属する正社員との間で不合理な待遇差の解消が求められる。
• 正社員と非正規雇用労働者との間で職務の内容等を分離した場合であっても、正社員との間の不合理な待遇差の解消が求 められる。
◆「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要②
(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)
パートタイム労働者・有期雇用労働者(1)
(1)基本給
• 基本給が、労働者の能力又は経験に応じて支払うもの、業 績又は成果に応じて支払うもの、勤続年数に応じて支払うものなど、その趣旨・性格が様々である現実を認めた上で、それぞれの趣旨・性格に照らして、実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。
• 昇給であって、労働者の勤続による能力の向上に応じて行うものについては、同一の能力の向上には同一の、違いがあれば違いに応じた昇給を行わなければならない。
(2)賞与
• ボーナス(賞与)であって、会社の業績等への労働者の貢献 に応じて支給するものについては、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。
(3)各種手当
• 役職手当であって、役職の内容に対して支給するものについては、 同一の内容の役職には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。
• そのほか、業務の危険度又は作業環境に応じて支給される特殊 作業手当、交替制勤務などに応じて支給される特殊勤務手当、業務の内容が同一の場合の精皆勤手当、正社員の所定労働 時間を超えて同一の時間外労働を行った場合に支給される時 間外労働手当の割増率、深夜・休日労働を行った場合に支給 される深夜・休日労働手当の割増率、通勤手当・出張旅費、労働時間の途中に食事のための休憩時間がある際の食事手当、同一の支給要件を満たす場合の単身赴任手当、特定の地域で 働く労働者に対する補償として支給する地域手当等については、同一の支給を行わなければならない。
▲<正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で賃金の決定基準・ルールの相違がある場合>
• 正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で賃金に相違がある場合において、その要因として賃金の決定基準・ルールの違いがあるときは、「正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者は将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが 異なる」という主観的・抽象的説明ではなく、賃金の決定基準・ルールの相違は、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他 の事情の客観的・具体的な実態に照らして、不合理なものであってはならない。
▲<定年後に継続雇用された有期雇用労働者の取扱い>
• 定年後に継続雇用された有期雇用労働者についても、パートタイム・有期雇用労働法が適用される。有期雇用労働者が定年後に継続雇用された者であることは、待遇差が不合理であるか否かの判断に当たり、その他の事情として考慮されうる。様々な事情 が総合的に考慮されて、待遇差が不合理であるか否かが判断される。したがって、定年後に継続雇用された者であることのみをもって 直ちに待遇差が不合理ではないと認められるものではない。
◆「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要③
(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)
パートタイム労働者・有期雇用労働者(2)
(4)福利厚生・教育訓練
• 食堂、休憩室、更衣室といった福利厚生施設の利用、転勤の有無等の要件が同一の場合の転勤者用社宅、慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障については、同一の利用・付与を行わなければならない。
• 病気休職については、無期雇用の短時間労働者には正社員と同一の、有期雇用労働者にも労働契約が終了するまでの期間を踏まえて同一の付与を行わなければならない。
• 法定外の有給休暇その他の休暇であって、勤続期間に応じて認めているものについては、同一の勤続期間であれば同一の付与を行わなければならない。特に有期労働契約を更新している場合には、当初の契約期間から通算して勤続期間を評価することを要する。
• 教育訓練であって、現在の職務に必要な技能・知識を習得するために実施するものについては、同一の職務内容であれば同一の、 違いがあれば違いに応じた実施を行わなければならない。
【ご参照】
◆『同一労働同一賃金のガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)』
URL https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf