2008.04.11
抵触日の通知義務
労働者派遣契約締結時の前提として、派遣先(新たな労働者派遣契約に基づく労働者派遣の役務の提供を受けようとする者)から派遣元事業主に対して、派遣受入期間の制限に係る「抵触日(抵触する最初の日)」の通知をしなければなりません(労働者派遣法第26条第5項)。とりわけ、自由化業務の場合は、原則1年、最長3年※1)という派遣受入期間の制限を厳守しなければなりません。引き続き派遣利用の場合は、受け入れ期間終了日(1年または3年)の前日までに派遣労働者に直接雇用を申し込まなければならないという義務が、派遣先の会社に生じることになります。
というのは、そもそも、派遣契約期間の制限は、派遣先に常用雇用される労働者の派遣労働者による代替を防止することに主眼が置かれていることから、3年を超えて引き続き同一の業務に継続して派遣労働者を従事させるような場合には、本来直接雇用にすることが望ましいという趣旨に基づくものだからです。
一方、派遣元事業主は派遣労働者に対し、派遣開始前に派遣受入期間の制限への抵触日を通知しなければなりません。また、派遣元事業主は、派遣受入期間の制限に抵触する日以降継続して労働者派遣を行わない旨(派遣の停止)を、派遣先が派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日の1ヶ月前から前日までの間に、派遣先及び派遣労働者に通知しなければならない(同法第35条の2等)と規定されています。
すなわち、労働者派遣法で、派遣先、派遣元事業主ともに「抵触日」を把握するよう規定しているのは、抵触日が、これ以上派遣を受け入れると派遣受入期間の制限規定に違反することになる最初の日であり、抵触に係る基準日に相当する重要日だからです。
派遣受入期間の制限については、派遣会社(派遣元)を変えたり、派遣労働者(スタッフ)を変えた場合でも、派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について、派遣可能期間を超える期間継続して派遣労働者を受け入れてはならない(同法第40条の2、附則第5項)と規定されています。つまり、この同一場所・同一業務の場合の例を挙げると、A氏・B氏・C氏の順で派遣され、それぞれの派遣期間を1年・1年6ヶ月・6ヶ月と仮定すると、派遣可能期間は丁度最長の3年※1)になるので問題は無いが、C氏が6ヶ月を超える派遣契約になると、派遣可能期間の3年を超えてしまう為、当該派遣契約は締結不能となります。勿論、個々の派遣労働者を異なる派遣会社から受け入れた場合でも、派遣可能期間を超えることはできません。
従って、既述のとおり、派遣時期が異なる複数の派遣労働者を受け入れた場合でも、同一場所・同一業務においては、1人目の労働者の派遣開始時期からその制限を受ける対象になるので、派遣先の事業者は、派遣労働者の労務管理には細心の注意を払う必要があるのです。
※1)物の製造業務のうち、特定製造業務(育児、介護休業の代替業務以外の業務)における派遣期間の経過措置は終了し、2006年3月1日以降に開始した派遣は、派遣先当該事業所の労働者の過半数組合等の意見聴取に係る手続きを踏めば、事実上3年まで延長可能。
参考:当「人事総務部」ブログエントリー「製造業界における2009年問題」ご参照。「派遣元責任者必携2007年版Ⅱ労働者派遣法」社)日本人材派遣協会編著。「労働者派遣・業務請負の就業管理-偽装請負問題への対応と適正な受入れのための法律知識―(木村大樹著)」社)全国労働基準関係団体連合会。「人事・労務管理シリーズⅥ―労働者派遣編―派遣を使う、活かす。ここがポイント」社)全国労働基準関係団体連合会。「新ルール対応 非正社員雇用の重要ポイントがよくわかる本(多田智子著)」中経出版。