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2008.05.21

紹介予定派遣契約への転換と留意点

 紹介予定派遣は、労働者派遣法改正により、一般派遣元事業主または特定派遣元事業主が、労働者派遣の役務の提供の開始前または開始後に、派遣労働者及び派遣先について、職業安定法その他の法律の規定による許可を受け、または届出をして職業紹介を行い、または行うことを予定しているものをいう(労働者派遣法第2条6号)と規定しています。また、「労働者派遣契約締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない」とする規定では除外(同法第26条7項)され、派遣先による直接雇用を実現する制度として、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為を認めることにより、円滑かつ的確な労働力需給の結合を図るための手段として、紹介予定派遣を可能としました※1)。具体的には、①派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等 ②派遣就業開始前及び派遣就業期間中の求人条件の明示 ③派遣就業期間中の求人・求職の意思等の確認及び採用内定の措置を行うことができるのです。
 地方労働局のヒアリングで、「当初は単なる労働者派遣でスタートし、途中で紹介予定派遣に切り替えることは問題なく、優良スタッフで直雇用になる可能性が高い場合は、派遣契約が終了する前に紹介予定派遣にしておく方がベターである」との助言を受けました。実際、紹介予定派遣を行う場合は、派遣元事業主及び派遣先が講じなければならない措置が規定されていますので、十分留意しなければいけません※1)。その措置の内容は、次の①から⑧の内容です。①労働者派遣契約に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること。②紹介予定派遣を受け入れる期間の遵守。③派遣先が職業紹介を希望しない場合又は派遣労働者を雇用しない場合の理由の明示。④派遣労働者の特定に当たっての年齢、性別等による差別防止に係る措置。⑤派遣労働者であることの明示等。⑥就業条件等の明示。⑦派遣元管理台帳に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること。⑧派遣先管理台帳に当該紹介予定派遣に関する事項を記載することです。
 しかし、紹介予定派遣への転換が可能にもかかわらず、「大手派遣会社等は、合法的に派遣スタッフを引き抜く事例も散見される(前掲同局ヒアリング)」とのことです。これは、(a)派遣労働者の雇用の努力義務(同法第40条の3)や、(b)派遣労働者への雇用契約の申込義務(同法第40条の4及び同条の5)の規定に基づく手法と言えます。即ち、前者(a)は、派遣労働者が、①同一の業務に従事することを希望する旨を派遣先に申し出たこと及び②派遣期間が経過した日から起算して7日以内に派遣元事業主との雇用関係が終了したことの両要件が必要で、同一の業務について派遣実施期間継続して従事した派遣労働者に対してのみ生じる優先雇用の努力義務です。他方、後者(b)は、①派遣受入期間の制限がある業務の場合、抵触日の前日までに、当該派遣先に雇用されることを希望する当該派遣労働者に対して雇用契約の申込みをしなければならず、また、②派遣受入期間の制限がない業務の場合、派遣就業の場所ごとの同一の業務について、派遣元事業主から3年を超える期間継続して同一の派遣労働者の役務の提供を受けている場合は、その同一の業務に労働者を従事させるため、3年が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときに生じる義務です。
 こうした対応は、決して「裏ワザ」ではありませんが、あくまでも、労働者派遣法に規定された義務に則った雇用であれば、紹介予定派遣契約への転換をすることなく、手数料を支払わずに済むタイミングで引き抜くという手法であると推察します。但し、紹介予定派遣の場合は、同一の派遣労働者について6ヶ月を超えて労働者派遣を行うことはできませんので、例えば、製造業務の派遣であれば、紹介予定派遣期間と合わせて、最大3年の派遣期間にする等の留意が必要なのは言うに及びません。また、有料職業紹介事業における取扱職業の範囲※2)は、労働者派遣事業とは異なり、港湾運送及び建設業務以外の職業はすべて取り扱うことができるので、偽装派遣を引き起こしたり、紹介予定派遣が単なる労働者派遣にとどまったりする等のトラブル要因になることも留意しなければなりません。いずれにしても、派遣元は派遣スタッフとの連絡を密にして、優良なスタッフが流出しないような努力をすることが、今後益々求められるのではないでしょうか。
※2)(取扱職業の範囲)職業安定法第32条の11(職業安定法:昭和22年11月30日法律第141号。最終改正:19年7月6日法律第108号)。
参考:※1)「労働者派遣事業関係業務取扱要領(最終改正:平成20年2月28日)」厚生労働省。「人事・労務管理シリーズⅥ―労働者派遣編―派遣を使う、活かす。ここがポイント(全国労働基準関係団体連合会編著)」労働調査会。「派遣元責任者必携2007年版Ⅱ労働者派遣法(日本人材派遣協会編著)」社)財形福祉協会。「労働者派遣法の改正点と実務対応(安西愈著)」労働調査会。