2014.12.11
★《中国の人材ビジネス事情》中国は「労務派遣暫定規定」で“派遣から製造請負(承攬)へ”
◆暫定規定施行で“労務派遣は10%規制”
今年、中国では『改正労働契約法(2013/7/1日付施行)』等に基づき、「労務派遣暫定規定」が施行(2014/3/1日付)されました。これは激増した労務派遣に対する政府の抑制策で、当該「暫定規定」では、「使用する被派遣労働者の人数はその使用総数の10%を超えてはならない(同規定第4条)」と規定しています。“暫定”の文言どおり、派遣先企業に対し、本規定の施行後、2年間の猶予期間(2016/3月まで)が設けられています。同「規定(参考翻訳版)」を下記に掲載しましたので、ご参照ください。
【ご参照】
◆「労務派遣暫定規定(中華人民共和国人力資源と社会保障部令第22号)」
第一章 総則
第一条 労務派遣を規範化し、労働者の合法権益を保護し、労働関係の調和と安定を促進するため、《中華人民共和国労働契約法》(以下労働契約法と略称する)等の法律、行政法規に基づき、本規定を制定する。
第二条 労務派遣事業主による労務派遣業務経営、企業(以下「派遣先」と称する)による被派遣労働者の使用については、本規定を適用する。
法律により設立された会計師事務所、弁護士事務所等のパートナーシップ組織と基金会、および民営非企業事業体等の組織が被派遣労働者を使用する場合、本規定に基づき執行する。
第二章 使用範囲と使用比率
第三条 派遣先は臨時的、補助的あるいは代替的な職場において被派遣労働者を使用する。
前項規定の臨時的職場とは、その存続する時間が6ヶ月を超えない職場を指す。補助的職場とは、主要業務者にサービスを提供する非主要業務職場を指す。代替的職場とは、企業の労働者が社外研修、休暇等の原因で勤務できない一定期間内に、その他の労働者が代わって勤務する職場を指す。
派遣先が被派遣労働者を使用する補助的職場を決定するには、従業員代表大会或は全体従業員の討論を経て、方案と意見を提出し、工会或は従業員代表者と平等に協議確定し、派遣先内部で公示しなければならない。
第四条 派遣先は厳格に労務派遣使用人数をコントロールしなければならず、使用する被派遣労働者の人数はその使用総数の10%を超えてはならない。
前項に言う使用総数とは、労働契約を締結した人数と、使用する被派遣労働者人数の合計である。
労務派遣使用比率を計算する派遣先とは、労働契約法と労働契約法実施条例に基づき労働者と労働契約を締結できる雇用者である。
第三章 労働契約、労働派遣協議の締結と履行
第五条 労務派遣事業主は法律により被派遣労働者と2年以上の固定期限の書面の労働契約を締結しなければならない。
第六条 労務派遣事業主は法律により労働者と試用期間を約定することができる。労務派遣事業主は同一の被派遣労働者と一度のみ試用期間を約定する。
第七条 労務派遣協議には以下の内容を記載しなければならない。
(一)派遣する職場名称と職場性質
(二)勤務場所
(三)派遣人数と派遣期限
(四)同一労働同一報酬の原則に基づき確定する労働報酬金額と支払い方式
(五)社会保険費の金額と支払い方式
(六)勤務時間と休息休暇の事項
(七)被派遣労働者の労災、出産或は疾病期間の待遇
(八)労働安全衛生及び研修の事項
(九)経済補償等の費用
(十)労務派遣協議期限
(十一)労務派遣服務費の支払い方式と標準
(十二)労務派遣協議違反の責任
(十三)法律、法規、規則規定上の労務派遣協議に関わるその他の事項
第八条 労務派遣事業主は被派遣労働者に対し以下の義務を履行しなければならない。
(一)被派遣労働者に労働契約法第八条に規定する事項を如実に告知し、規則制度及び労務派遣協議の内容を遵守しなければならない。
(二)研修制度を構築し、被派遣労働者に勤務上の知識、安全教育訓練を行う。
(三)国家規定と労務派遣協議の約定に基づき、法律により被派遣労働者の労働報酬及び関連する報酬を提供する。
(四)国家の規定と労務派遣協議約定に基づき、法律により被派遣労働者のために社会保険費を納付し、社会保険関連手続を行う。
(五)派遣先が法律により被派遣労働者に労働保護と労働安全衛生条件を提供するよう督促する。
(六)法律により労働契約を解除或は終了する証明を発行する。
(七)被派遣労働者と派遣先の紛争処理に協力する。
(八)法律、法規及び規則に規定するその他の事項。
第九条 派遣先は労働契約法第六十二条の規定に基づき、被派遣労働者に職場に関わる福利待遇を提供しなければならず、被派遣労働者を差別してはならない。
第十条 被派遣労働者が派遣先で事故に遭い負傷する場合、労務派遣事業主は法律により労災認定を申請し、派遣先は労災認定の調査確認業務に協力しなければならない。労務派遣事業主は労務保険責任を負うが、ただし、派遣先と補償方法を約定することができる。
被派遣労働者は職業病診断、鑑定を申請時、派遣先は職業病診断、鑑定について責任を負い、事実通りに職業病診断、鑑定に必要な労働者の職歴や危害接触の経歴、勤務場所の職業病危害要素の検査結果等の資料を提供しなければならず、労務派遣事業主は被派遣労働者の職業病診断、鑑定に必要なその他の材料を提供しなければならない。
第十一条 労務派遣事業行政許可有効期限を延長していないか或は《労務派遣経営許可証》撤去、取消された場合、被派遣労働者と法律により既に締結した労働契約は期限満了まで履行しなければならない。双方協議同意した場合、労働契約を解除することができる。
第十二条 以下の情況の1つがある場合、使用者は被派遣労働者を労務派遣事業主に返還することができる。
(一)派遣先に労働契約法第四十条第三項、第四十一条に規定する情況がある場合
(二)派遣先が法律により破産を宣告され、営業許可証取消、閉鎖命令、撤去を受けるか、事前に解散或は経営期限満了後経営を終了する場合
(三)労務派遣協議期間が満了した場合
被派遣労働者が返還され仕事が無い期間中、労務派遣企業は所在地人民政府の規定する最低賃金標準を下回らない金額で月ごとに報酬を支払わなければならない。
第十三条 被派遣労働者に労働契約法第四十二条に規定する情況がある場合、派遣期限満了前に、派遣先は本規定第十二条第一款第一項の規定に沿って派遣労働者の労務派遣事業主へ戻してはならない。派遣期限が満了しても、相応の情況が消失した後に戻さなければならない。
第四章 労働契約の解除と終了
第十四条 被派遣労働者は30日前に書面で労務派遣事業主に通知し、労働契約を解除することができる。被派遣労働者は試用期間において3日前に労務派遣事業主に通知し、労働契約を解除することができる。労務派遣事業主は被派遣労働者が労働契約解除を通知した情況を適時に派遣先に告知しなければならない。
第十五条 被派遣労働者が本規定第十二条の規定に依り派遣先より返還され、労務派遣事業主があらためて派遣する時に労働契約に約定する条件を維持或は引き上げ、被派遣労働者がこれに同意しない場合、労務派遣事業主は労働契約を解除することができる。被派遣労働者は本規定第十二条の規定により派遣先より返還され、労務派遣事業主があらためて派遣する時労働契約に約定する条件を引き下げ、被派遣労働者がこれに同意しない場合、労務派遣事業主は労働契約を解除してはならない。ただし、被派遣労働者が労働契約解除を提出する場合を除く。
第十六条 労務派遣事業主が法律により破産宣告、営業許可証取消、閉鎖命令、撤去を受けるか、事前の解散を決定するか或は経営期限満了後経営を継続しない場合、労働契約は終了する。派遣先は労務派遣事業主と協議し適切に被派遣労働者を配置しなければならない。
第十七条 労務派遣事業主に労働契約法第四十六条或は本規定第十五条、第十六条に規定する情況があり、被派遣労働者と労働契約を解除或は終了する場合、法律により被派遣労働者に経済補償金を支払わなければならない。
第五章 地域をまたぐ労務派遣の社会保険
第十八条 労務派遣事業主が地域を跨ぎ労働者を派遣する場合、派遣先の所在地にて労働者のために社会保険に加入しなければならず、派遣先所在地の規定に基づき社会保険費を納付しなければならない。被派遣労働者は国家の規定に基づき社会保険待遇を享受する。
第十九条 労務派遣事業主が派遣先の所在地に支店を設立する場合、支店より被派遣労働者のために加入手続を行ない、社会保険費を納付する。
労務派遣事業主が派遣先所在地に支店を設立していない場合、派遣先は労務派遣事業主に代わり被派遣労働者のために加入手続を行ない、社会保険費を納付する。
第六章 法律責任
第二十条 労務派遣事業主、派遣先が労働契約法と労働契約法実施条例の労務派遣に関わる規定に違反する場合、労働契約法第九十二条の規定に基づき執行する。
第二十一条 労務派遣事業主が本規定に違反し被派遣労働者と労働契約を解除或は終了する場合、労働契約法第四十八条、第八十七条の規定に基づき執行する。
第二十二条 派遣先が本規定第三条第三項の規定に違反する場合、人力資源社会保障行政部門により是正を命じ、警告を与える。被派遣労働者に損害を与える場合、法律により賠償責任を負う。
第二十三条 労務派遣事業主が本規定第六条の規定に違反する場合、労働契約法第八十三条の規定に基づき執行する。
第二十四条 派遣先が本規定に違反し被派遣労働者を返還する場合、労働契約法第九十二条第二項の規定に基づき執行する。
第七章 附則
第二十五条 外国企業常駐代表機構と外国金融機構中国駐在代表機構等が被派遣労働者を使用する場合、及び船員派遣先が労務派遣形式で国際遠洋船員を使用する場合、臨時的、補助的、代替的職場と労務派遣使用比率の制限を受けない。
第二十六条 雇用者が労働者を国外に派遣し仕事をさせるか或は家庭、自然人に労働を提供する場合、本規定に称する労務派遣に属さない。
第二十七条 派遣先が請負、アウトソーシング等の名義で、労務派遣使用の形式に基いて労働者を使用する場合、本規定に基づき取り扱う。
第二十八条 派遣先が本規定の施行前に被派遣労働者使用人数が使用総数の10%を超えている場合、調整使用方案を制定し、本規定施行の被から2年以内に規定比率まで引き下げなければならない。ただし、《全国人民代表大会常務委員会 〈中華人民共和国労働契約法〉修正に関する決定》公布前、既に締結した労働契約と労務派遣協議の期限満了が本規定施行から2年以降となる場合は、法に基づき期限満了まで履行する。
派遣先は、本規定施行前に使用する被派遣労働者人数を規定に符合する比率に引き下げるまで、新たな被派遣労働者を使用してはならない。
第二十九条 本規定は2014年3月1日より施行する。