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2012.02.11

★偉大なる田舎「名古屋市」は“400万都市”に変貌できるのか

◆“全国一規模の新都市誕生”の構想

 名古屋市の将来像を《「横浜を上回る400万人規模の街にしたい」》と、河村たかし名古屋市長が語ったとの報道(1/20)に接しました。名古屋市民としては“まだ何も聞いていない話”ですので、市長の唐突な構想に驚嘆したところです。勿論、昨年から愛知県(大村秀章知事)と名古屋市は『中京都構想』を謳っていますので、市長が提言する“400万都市”という新たな名古屋市の構築は、中京都の礎になるべくものと推察します。ひとくちに「400万都市」と言っても、その都市規模を考えると、政令指定都市で現在、全国トップの人口(約368万人:2010年国勢調査人口確定値)を誇る「横浜市」を抜き、“全国一の人口規模を擁する新都市”を誕生させるという大胆不敵な構想と言えます。

◆“尾張名古屋共和国市”構想

 河村名古屋市長によると、この新たな都市の構築は“尾張名古屋共和国市”構想と称し、《現在の名古屋市を解体せず、周辺の市町と一体となって経済や文化の振興を図る都市圏をつくる考え方(市長の市議会答弁)》のようです。そこで、文言どおりに「名古屋市(人口約226万人:前掲の同調査)」を解体しないで都市圏を単純に広げた場合、既存市町村の人口を前提に、新都市の市域がどこまで広がるのかを試考してみました。以下に述べる試考は、あくまでも「当ブログの独断的仮想考察」ですので、くれぐれも誤解なさらないよう予めお断りしておきます。

◆“図上試考”で該当する既存市町村域は

 防災分野で実施されている図上訓練とは全く無関係ですが、前掲の「新都市構想」の規模をイメージすべく、既存の県内市町村人口(『愛知県人口動向調査結果:2011/12/1現在(推計人口)』※)に基づいて単純に加算合計し、名古屋市を解体しないで都市圏を広げた場合を想定しました。そして、約400万人規模になる地域を地図に当てはめて見ると、新都市域は次の既存市町村を合わせた規模になりました。
【仮想都市域】
●名古屋市 ●春日井市 ●小牧市 ●稲沢市 ●東海市 ●あま市 ●日進市 ●大府市
●北名古屋市 ●尾張旭市 ●豊明市 ●清須市 ●津島市 ●愛西市 ●みよし市 ●長久手市
●岩倉市  ●弥富市 ●東郷町 ●蟹江町 ●大治町 ●豊山町 ●飛島村
(註)前掲調査結果※に基づいた「仮想都市域」は、上記「18市4町1村」域を合わせた規模に相当し、人口の多い市町村順に記載。

◆人口400万人の“仮想都市域”

 前記「仮想考察」を前提とした場合、新都市の人口は「約400万人(計:398万6,259人)」を擁することになります。当該試考が大変乱暴な点はお詫び申し上げますが、敢えて補足すると、“仮想都市域”は、現在の名古屋市を核とし、「飛び地」は皆無のすべて接合した自治体地域を選択したので、当該市域をイメージし易いのではないかと、勝手ながら些かの救いを願う次第です。そして、仮想都市域を東西に拡大設定したことで、各鉄道の「名古屋駅」の位置は、仮想都市の中心に少なからず近づいたのではないかと思います。勿論、これはあくまでも“バーチャル都市”ですから、現実的でないことは全く否めません。

◆名古屋市の「特定都市再生緊急整備地域」
 “400万都市 名古屋”を構築する為、どの既存市町村と統合すべきか云々については、ここでは議論不能です。それを想定する以前に、「新都市(400万都市名古屋)」創設には、まず「名古屋市」がより一層魅力ある経済都市に成長することが求められるのではないでしょうか。
 さて、《都市の魅力と国際競争力を高めるため、内閣に都市再生本部(本部長:内閣総理大臣)》が設置(2001年)されていますが、現在、当該組織は「都市再生特別措置法」施行(2002/6/1)に基づいて運営されています。その「都市再生本部」が取り組んでいる「民間都市開発投資の促進」の一環として、この度、「都市再生緊急整備地域を定める政令の一部を改正する政令」が閣議決定(12/1/20)されました。改正された『都市再生緊急整備地域及び特定都市再生緊急整備地域を定める政令』では、「特定都市再生緊急整備地域」のひとつとして、新たに「名古屋駅周辺・伏見・栄地域(110ha)」が指定されたのです。尚、当該地域は「都市再生緊急整備地域(385ha:同市)」に包含されており、その「概要(抜粋)」は次のとおりです。
【名古屋駅周辺・伏見・栄地域】
 広域交通結節点の名古屋周辺地域と商業・業務機能の集積する栄地区の都心部の2核を形成する地域において、リニア新幹線の整備を見据え、豊かな公共空間等を活用しながら都市のモビリティを高めるとともに、モビリティ産業に関わる企業・人材や、文化交流を支える都市機能の集積を促進することで、高い国際競争力を発揮する世界的先進地区の形成を推進する。

◆“名古屋の特長”は
 そもそも、名古屋市内の主要道路の幅(100m)が広くて有名なのは、その歴史を振り返れば、“防災都市”を目指していたことがわかります。勿論、市内には公営交通(地下鉄・バス)をはじめ、民間交通を含めた都市交通は整備されていますが、県内に日本を代表する自動車メーカーが存在しますので、社会人の通勤手段は勿論のこと、市民の日常生活は自動車による移動が主流になっているのです。また、『日本国内で地下街が広い駅』の調査結果(11/9/9日付:都市地下空間活用研究会)によると、その上位第2・第3位に、それぞれ「名古屋・栄駅」と「名古屋駅」が君臨しています。因みに、両者の地下街総面積は、前者が「8万4,106㎡」、後者が「8万2,387㎡」という広さを誇っています。更に、市内に都市高速道路の整備で地上の道路は日陰の身となり、市民は「地下街」を巡って移動している為、一部の商店街を除き、残念ながら、地上の賑わいは遠ざかってしまった嫌いがあるのは否めません。

◆“偉大なる田舎?名古屋市”
 ところで、過日、河村名古屋市長は東京都内の鉄道駅前でチラシを配布し、企業・個人を対象に「減税都市名古屋への進出・移住」をPRしましたが、都民は「名古屋は田舎だから」との素っ気無いアンケート回答が報道されました。ここで、名古屋市民の名誉の為にも補足しておきますが、前記のように、名古屋市の特長が存在するにも関わらず、“偉大なる田舎”と言われるのは、バブル時代以前の昔からのことであり、何も今日始まった訳ではありません。しかしながら、言わば東京志向の名古屋市としては、このアンケート結果ひとつを取り上げても、名古屋は依然として地味な都市で、PR不足というよりもむしろ“アピール下手”と言えるのかもしれません。

◆注目される「リニア新幹線&ささしまライブ24地区」
 前掲の「特定都市再生緊急整備地域の概要(抜粋)」のとおり、何と言っても今後注目されるのは、『リニア新幹線(超電導磁気浮上方式中央新幹線)整備計画(東海旅客鉄道株式会社)』だと思います。リニア新幹線の開業目標は2027年で、東京~名古屋間を40分で結ぶという“夢の超特急”です。過去に遡及すれば、現新幹線の所謂“名古屋飛ばし”という苦い歴史がありましたが、リニア新幹線が大阪まで延伸するにはまだ随分年数を要しますので、まさに「名古屋の本領を発揮すべき時代が到来した」と言えるのではないでしょうか。現在、すでに名古屋駅周辺の再開発事業は進行中で、特定都市再生緊急整備地域に属し、JR名古屋駅から徒歩圏(同駅南方約1㎞)に位置する「ささしまライブ24地区(約12.4ha以上)」には、名古屋市の大規模再開発事業コンペで優秀賞を受賞した「私立大学(2012/4月:新キャンパス開校)&大手自動車メーカー系商事会社」の進出がすでに決定しており、地元TV局も移転して来る予定です。

◆“サスティナブルな街づくり”を
 何でもいいからランドマークとなるべく「箱モノ」を建立すれば良いという時代は終焉したのではないでしょうか。例えば、シンガポールの観光名所「マーライオン公園」の対岸(マリーナ・ベイ地区)にオープンした全長150mの屋外プールが設置された『スカイガーデン(標高200m)』は、確かにシンガポールの「水の歴史」を反映したすばらしい建築物ですが、名古屋市民のひとりとしては、ただ驚嘆するような建築物の建立を望んでいる訳ではありません。少子高齢社会が進行する中、名古屋が真に“400都市”を目指していくのであれば、前記の大学や民間企業による提案進出を含めた市民参画による斬新な知恵と工夫が求められ、そこに産官学が国際的に集える新たな賑わいを創出し、名古屋市民が誇れる“サスティナブルな街づくり”を切に期待するところです。このような人口集約できた新たな街づくりは、“400万都市 名古屋”構築への足掛かりになるものと考えます。
【ご参照】
●ブログ記事(2011/7/26日付)
 :『“地デジ”完全移行後の「名古屋テレビ塔」の生き残り策は市民提案と再開発の一体開発を』。
【資料】内閣官房地域活性化統合事務局公表資料。総務省地方制度調査会公表資料。愛知県県民生活部統計課公表資料。