2011.11.12
★起死回生を図る日本の“クール・ジャパン戦略推進事業”
◆目的は“日本経済の活性化”
今夏、わが国内では「東日本大震災」の影響を受け、「スーパークールビズ」が展開されましたが、表題の“クール・ジャパン(COOL JAPAN)”は、それとは全く無関係です。ひと言で言うと、“クール・ジャパン”は、《日本の魅力を高め、世界に届ける仕組みを作り、来訪を促進することにより、経済成長を実現し、雇用を創出する(経済産業省)》というわが国の経済戦略です。
◆「K-POPアーティスト」の台頭
さて、日本のマスメディアにおいて、今話題のJ-POPグループ「AKB48」ならぬ、所謂「K-POPアーティスト」の台頭が著しい今日この頃です。かつて「韓国ドラマ」TV放映の高視聴率に始まった韓流ブームは、わが国との政治情勢の影響も相俟って若干落ち着いたようでしたが、今、再燃した感があります。とりわけここに来て、「K-POPアーティスト」の日本進出には目を見張るものがあるのではないでしょうか。
◆韓国政府のバックアップ
では、なぜ彼らの日本進出が顕著なのでしょうか?この素朴な疑問について、有名な「K-POPアーティスト」を育成したプロデューサー(キム・キョンウク氏等)の話が、『シネマトゥデイ(映画ニュースサイト)』に掲載されていましたので、その要点を以下にご紹介致します。
それは、セミナー(「K-POPの目指す世界戦略:10/26」:ユニジャパンエンタテインメントフォーラム2011)で語られたのですが、即ち、《長期間にわたって行われる「人材育成」、さらに周到に行われる「マーケティング戦略」という両面を組み合わせたビジネスモデルがある》ことに裏付けされているようです。そして、当該セミナーでは、《日本を含めたアジアマーケットの広さと開拓の必要性を強調した》とのことです。更に、韓国政府(公正取引委員会)が《芸能人の契約書のひな形を提示した》ことにより、《信頼度の高い、健全な契約を結べるようになり、海外進出がスムーズにいくようになった》という経緯があったのです。
◆わが国は“クール・ジャパン戦略”
こうした韓国カルチャーの日本進出に対し、わが国はどうかというと、「クール・ジャパン官民有識者会議(座長・福原義春:株式会社資生堂名誉会長)」※1)の『提言(2011/5/12日付):計25頁』に基づき、現在、経済産業省を中心※2)に推進されています。この『提言』は、『新しい日本の創造―「文化と産業」「日本と海外」をつなぐために―』と題され、政策の柱として、(1)日本のブランドの強力な発信、(2)東日本の復興への貢献、(3)創造基盤の構築、(4)海外展開、の4項目が挙げられています。
◆クール・ジャパンの“海外展開”
そして、前記「(4)海外展開」の第一弾として、過日、《フランスを拠点とする海外販路開拓支援事業》が開催されました。具体的には、(1)「Futur en Seine (フチュール アン セーヌ) :11/6/23~26」と、(2)「Japan Expo (ジャパン エキスポ):11/6/30~11/7/3」の両イベントです。
前者(1)は、2009年より隔年開催の《革新的デジタル技術の祭典》で、《我が国のコンテンツ関連の技術や製品・サービスを紹介》し、パリ市内40か所以上の会場で開催(前回:90万人以上の参加)されました。
一方、後者(2)は、《アニメ、マンガ、ゲーム、ファッションから、伝統工芸品や観光まで、あらゆる日本のコンテンツを発信するヨーロッパ最大級の日本文化とエンターテインメントの祭典》です。今年は11年目の開催で、日本の「10の地方自治体」も参加し、入場者数は約19万人強に上りました。
◆2020年目標は“8~11兆円の経済効果”獲得
また、前掲『提言』では、「海外売り込みの指針」として、次の5点(小見出し:原文のまま)が示されています。
(1)「クール・ジャパン」ブランドの組織的な発信
(2)カテゴリーごとの、各重点地域における「面による展開」
(3)カテゴリーをまたがる取組の推進
(4)観光誘致への貢献
(5)東日本の復興、地域活性化への貢献
これら「クール・ジャパン戦略」に基づく市場規模は、ファッション、コンテンツ、観光の分野で“8~11兆円(2020年目標)の経済効果の獲得”を目指しています。この「クール・ジャパン」を展開する市場は「アジア」のみならず、「欧州」、「米国」等を含め、とりわけアジアにおける重点市場は「中国」です。そして、「韓国」や「台湾」も考慮に入れ、「香港」や「シンガポール」もターゲットとし、《インドも重点対象国とする》と明言しています。
◆“日本の良さ”を世界に発信
冒頭掲載の「K-POPカルチャー」は、“韓国が世界進出すべくひとつの手法”と捉えることができるのではないでしょうか。未曾有の「東日本大震災」に遭遇したわが国ですが、傍観している訳にはいきません。今、まさに復旧・復興を踏まえ、全産業を通じて海外展開に強く打って出る時期ではないかと思います。我々日本人が“日本の良さ”を再認識し、世界に向けて強力に発信していくことにより、訪日観光客の増加を含めた“インバウンド効果”創出に専念して行くことが求められているのではないでしょうか。
※1)座長代理:松岡正剛氏(編集工学研究所所長)、民間委員は、秋元康氏(作詞家、プロデューサー、脚本家)等、計18名。
※2)その他の「政府・関係機関」は、内閣官房(知的財産戦略推進事務局)、総務省、外務省、文部科学省(文化庁)、農林水産省、国土交通省(観光庁)、日本貿易振興機構(JETRO)。
【ご参照】
●ブログ記事(11/2/19日付)
:「『訪日外国人ロードマップ』と中国人観光客の誘致について」。
【資料】経済産業省製造産業局クール・ジャパン室公表資料。