2008.05.20
紹介予定派遣に係るトラブル多発
◆紹介予定派遣は「労働者派遣」の一形態
紹介予定派遣は、企業の通常雇用者の採用を労働者派遣という就業制度を通じて、安定した雇用と雇用後の定着を図ることを目的とし、所謂、労働者派遣法※1)が改正(平成12年12月1日)されて可能となりました。とは言え、紹介予定派遣は、派遣労働者と派遣先の間の雇用関係成立の斡旋(職業紹介)を前提とした労働者派遣制度であることには変わりはないため、労働者派遣契約に当該紹介予定派遣に関する事項を記載するとともに、派遣労働者であることを明示しなければなりません。
◆派遣スタッフとの口約束による「直接雇用」が原因
法改正後8年目になりますが、「最近、派遣元の会社から、派遣したスタッフが派遣先に直雇用されたが、派遣先から紹介手数料がもらえず困っている」との相談が数多く入っている(地方労働局ヒアリング結果)ようです。具体的には、「派遣されたスタッフが良い働きをしたなら、そのうち紹介してもらって直雇用にする等の口約束を派遣先としていたが、契約内容が単なる労働者派遣にとどまっていたので、契約終了後、派遣先にスタッフが雇用されても紹介手数料の請求はできなかった」という経緯でした。
◆「両事業主が講じなければならない措置」に規定
こうした紹介予定派遣に係る現実のトラブルを解消するため、紹介予定派遣の基本に立ち返って考えると、紹介予定派遣を行う場合には、派遣元事業主及び派遣先が講じなければならない措置(8項目)が規定※2)されていますので、それを忠実に遵守する以外に方法はありません。即ち、前記トラブル事例の場合は、冒頭の①「労働者派遣契約に当該紹介予定派遣に関する事項を記載する」ことをはじめ、②当該スタッフは「派遣労働者であることの明示等」、また、③「派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳の各々に、当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること」が必須事項です。
◆紹介予定派遣契約締結時が肝要
これら遵守事項を疎かにすると、事例のように、優秀な人材をみすみすタダで流出する結果を招きます。あくまでも、派遣先は求人先として、紹介予定派遣の開始前・開始後(派遣法第2条6号、第26条7項)※1)の別なく、労働条件等の明示※3)の書面を交付し、紹介予定派遣労働者に通知して職業紹介を行うことが認められていますので、派遣元は紹介業者として、きちんと整備した紹介予定派遣契約を締結しておくことが重要です。
※1)「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年7月5日法律第88号。昭和61年7月1日施行)」。
※3)職業安定法第5条の3(昭和22年11月30日法律第141号。最終改正:平成19年7月6日法律第108号)。
参考:※2)「労働者派遣事業関係業務取扱要領(最終改正:平成20年2月28日)」厚生労働省。「派遣元責任者必携2007年版Ⅱ労働者派遣法(日本人材派遣協会編著)」社)財形福祉協会。「労働者派遣法の改正点と実務対応(安西愈著)」労働調査会。「混成職場の人事管理と法律知識Q&A(産労総合研究所編)」経営書院。