2008.04.24
日雇派遣労働者の生活実態
今や「ワーキングプア」※1)というワードは日常用語として使われ、「ネットカフェ難民」も同じ範疇として語られています。まさに、インターネットカフェにて一杯のコーヒー等で夜を明かすのでそのようなネーミングになったようですが、たとえ廉価なコーヒー代金でも支払うことができる経済的余力がある点で、一部の日雇派遣労働者より恵まれた生活を送っているのかもしれないという、日雇派遣労働者の生活実態についてのお話です。
日雇派遣労働者の大半は、特定の事業所に継続的に日雇い就労していますが、気象条件や景気動向による雇用調整の影響をダイレクトに受ける等で仕事に就けない場合もあり、定収入が保障されている訳ではありません。社会一般の皆さんがご存知の情報以上に、一部の日雇派遣労働者の生活は、その想像を遥かに超えるものです。前記事情から、日雇派遣労働者の収入は不安定のため、「from hand to mouth(その日暮らし)」の生活です。農業に例えるなら、田植えから稲刈りを1日で終え、収穫した米をその日に食してしまうという、全くあり得ない「1日毛作」です。日雇派遣労働者等は定住地を持たないため、都心には安価な簡易宿泊所(名称はホテルでも一泊1,800円等より)が現存しています。収入が途絶えれば、衣食住の食が優先されるため、大都市駅の周辺や地下街出入り口等で野宿者になる場合もあります。食事優先と言っても、所持金が無い場合等は、集合墓地の供物を食して飢えを凌ぐことも避けられない場合もあるというのが現実です。
国は、こうした日雇派遣労働者が失業した場合(住居喪失不安定就労者)※2)に、「日雇労働求職者給付金(雇用保険制度)」を支給して常用就職に向けた支援を実施しており、給付金手続きと併せて、新たに職業相談を受ける窓口(指定安定所)※3)を定期開設してサポートしていく方針です。但し、指定安定所以外でも受付は可能ですが、失業認定の職業相談は、指定安定所でなければなりません。
ただ、日雇派遣労働者が常用労働者に移行できたとしても、正規常用労働者として採用後、「初めて受け取る給料日までの生活費が無い」という点が一番の課題なのです。と言うのは、日雇労働求職者給付金を受ける(年齢制限無し。全国どこのハローワークでも可)には、「日雇労働被保険者手帳(通称:「日雇手帳(1年更新)」)」に雇用保険印紙の貼付が必要で、最低日数の13日分に相当する同給付金を受けるには、「給付を受けようとする月の前月、前々月」の収入印紙(印紙貼付条件は1枚/1日)の合計枚数:26~31枚が必要なので、その日数分の就労を確保しなければならないからです。
規定就労数を確保する前に、常用雇用時の給料日までの生活費確保こそが優先命題で、まさに、これが日雇派遣労働者生活から脱却できない事由であり、その実態が在るのです。前記の相談支援窓口では、「生活支援」と「居住支援」で、各々20万円・40万円の貸付金給付(要件有り)の実施も予定されていますので、「砂漠のオアシス」になることを祈るばかりです。
但し、日雇派遣労働者の健康状態の良否や、また、日雇就労のニーズ皆無やその雇用形態が存在しないとされる地域のハローワークでは、「失業状態」にないという理由で給付を断られることがあるのは、不正受給防止のためと考えられます。そして、不正受給が発覚した場合は、受給資格を失い、ハローワークに日雇手帳を没収されることもあります。
※2)全国で約5,400人と推定され、うち約8割が東京・大阪・愛知に集中。「住居喪失不安定就労者の実態に関する調査(平成19年)」厚生労働省。
※3)相談支援窓口:「就労支援」は、厚生労働省が「東京ホームレス就業支援事業推進協議会(通称:東京ジョブステーション)」に委託等して開設(東京・大阪・愛知)。他の地域は、ハローワークが担当。その他、「生活支援」・「居住支援」有り。
参考:※1)当「人事総務部」ブログエントリー「1日210円未満で生活する労働者」ご参照。厚生労働省職業安定局公表資料(平成20年4月15日)。「ウィキペデイア(フリー百科事典)」等。