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2013.02.02

★今、生き残り策を迫られている「法科大学院」

◆生き残りを迫られる法科大学院

 当ブログの過去記事(下記【ご参照】)で、“法科大学院が淘汰される”と述べて以来、早3年が経過しますが、これまでの経緯については、当「ブログ過去記事」※1)をご参照願えれば幸甚です。さて、表題のとおり、ここに来て、全国の法科大学院は、喫緊の課題として“生き残り策”を求められているのです。

◆「合格者数10名未満」の法科大学院は過半数超

 直近データで『平成24年司法試験法科大学院等別合格者数等:法務省』の「法科大学院別の最終合格者数」を見ると、「5名未満」が14校(対法科大学院数占率:18.9%)、「10名未満」は38校(同占率:51.4%)という結果です。「合格者数10名未満」の法科大学院が全体の過半数超に上っているのは、誠に残念な感を抱きます。勿論、実際の出願者及び受験者数の多寡により、各法科大学院の合格率は毎年変動しますが、極論的に「1名受験、1名合格」の場合等は、合格率が100%になることは言うまでもなく、単に「合格率」に焦点を当てることを是と捉えている訳では毛頭ありません。

◆その内、9校が国立法科大学院

 また、最終合格者の絶対数を取り上げるのも気が曳けますが、ブログ読者の皆様にご確認いただくという観点から敢えて記すことにしました。前記『資料』によると、「合格者数10名未満」のうち、国立法科大学院は9校(対最終合格者数10名未満校占率:23.7%)でした。当該校の名誉の為、法科大学院名は伏せますが、残念ながら、当該9校は合格率も「11.6%」という低率に終わっているのです。一方、私立法科大学院は、当該年の最終合格者数が「0名」及び「1名」という結果が各々1校ずつ存在し、何をかいわんや、です。

◆“合格者数の減員(半減)”を表明した日弁連

 そもそも現在の司法試験制度が、《平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3,000人程度とすることを目指す》とした『司法制度改革推進計画(2002/3/19日付:閣議決定)』※1)に基づく司法改革制度の一環であり、年々低下する合格率だけで司法試験制度の在り方を論じるのは乱暴と言えるでしょう。こうした経緯を踏まえ、昨年、日本弁護士連合会は、『法曹人口政策に関する提言』を公表(2012/3/27日付)しました。当該「提言」では、《司法試験合格者数をまず1,500人にまで減員》する旨が表明されています。日弁連の山岸憲司会長は、《法曹養成制度の改革、司法修習生への経済的支援、法曹人口問題などに、あるべき方向性を示すべく議論を重ねている政府の法曹養成制度検討会議への対応に力を注ぎます》と年頭所感を述べられています。

◆「予備試験合格者」の合格率は約70%
 こうした背景の下、すでに統廃合を決めた法科大学院も存在し、今や、国・私立の設置形態を問わず、全国の法科大学院は生き残りを迫られ、模索している状況に置かれているのです。前回の「ブログ過去記事」※1)では“原点回帰”が必要と述べましたが、従って、司法試験合格者数の増加だけをいたずらに標榜する訳にもいきません。但し、法科大学院での修学を経ない受験者、つまり「予備試験合格者」の合格率は「68.2%(前掲『資料』より算出)」と高率で、この約7割という合格率こそ、法科大学院が発足時の目標だったのです。

◆乱立された法科大学院
 決して低料金とは言えない法科大学院の授業料等を鑑み、各法科大学院が存続を望むのであれば、各校の特色や魅力の向上がより一層問われることになります。そして、低合格率の所謂“重点校”は、これまで以上に安閑としていられない環境下に置かれることを懸念します。“質か量か”の二者択一どころか、依然として“組織構成の基準未達”が問われる法科大学院が残存しているとすれば、厳しい前途と言わざるを得ないでしょう。司法試験合格の勉学に勤しむ法科大学院生の質の向上等を求める前に、やはり、新司法試験制度発足時における“法科大学院の乱立”に問題があったことは否めないのではないか、と今更ながら思います。

◆法曹人口の将来展望を
 そこで、先ず政府の「法曹養成制度検討会議」にお願いしたいのは、法曹人口の将来展望です。初期の目標が崩壊した今となっては、現実論として「今後どれだけの法曹人口の維持・増加が必要なのか」という1点に絞ります。この点の見直しを前提に、全国の各法科大学院に対して「存続や定員増減等の指導」がなされる必要があるのではないでしょうか。単に司法試験の年間合格者数の目標を“半減”すれば落ち着くというものではなく、“中長期展望に立脚した法曹人口目標の再設定”を願うところです。
【ご参照】
※1)ブログ記事(2010/4/16日付):『★「大学評価」で淘汰される“法科大学院”』。
 URL http://www.jsbb.jp/sj/1809/