2011.02.19
『訪日外国人ロードマップ』と中国人観光客の誘致について
◆「2位じゃダメなんですか?」
過日、《2010年の名目国内総生産(GDP)の実額は中国が日本を約4,000億ドル上回り、米国に次ぐ経済大国の地位が入れ替わ》り、日本は3位が確定(内閣府公表)したとのマスコミ報道がありました。「上海万博」が閉幕してから4ヶ月が経過するところですが、当ブログ記事(下記ご参照)で《中国に草木もなびく》と記載したのを思い出しました。「上海万博」開催で、日本の「大阪万博(6,421万人)」記録の過去最多入場者数は破られ、当初目標「7,000万人」を突破して新記録を樹立したのはご同慶の至りです。中国に「GDP」世界第2位の座も奪われた日本は、このまま隣国の日の出の勢いを傍観するに留まっていていいのでしょうか。
◆未達に終わった「2010年目標」
わが国内では、観光庁(国土交通省の外局)が設置(08/10/1)されたものの、円高や昨年の「尖閣諸島」問題勃発の影響を受けて観光客は一気に低迷し、2010年の訪日外国人旅行者数の目標「1,000万人」が未達成となったのは誠に残念です。それでも、《2010年1~12月の訪日外国人数は過去最高の861万1,500人(前年比:26.8%増)》を記録し、中国の訪日人数が4割増(141.31万人)となったのは、観光査証(ビザ)の要件緩和が寄与したものと思われます。因みに、訪日外国人のトップは、「韓国(243.98万人)」で中国の約1.7倍でした。
◆「訪日目的」は何か
政府は「訪日外国人旅行者数」の目標を、2013年は「1,500万人」、2019年には「2,500万人」と設定しています。これは『訪日外国人3,000万人へのロードマップ』の中間目標で、訪日外国人誘致に対し、わが国の現在の外交や隣国はじめ諸外国の政治情勢を鑑みると、日本が受動的な態勢ではとても大きな進展は望めないと懸念します。そこで、『JNTO訪日外客訪問地調査2010』結果を参考に見ると、訪日目的は「観光客」が約6割弱を占め、観光客が訪日前に期待した事柄に注目します。その第1位は2年連続で「食事(62.5%)」、第2位は「ショッピング(53.1%)」で、第3位以下は「歴史的・伝統的な景観、旧跡(45.8%)」、「自然、四季、田園風景(45.1%)」、「温泉(44.3%)」と続いています。ここに訪日誘致の「ヒント」が秘められているのではないでしょうか。
◆模索すべきは「誘致への新たな道」
わが国内では産業の空洞化が懸念されていますが、昨年、創業105周年を迎える石川県・和倉温泉の老舗旅館「加賀屋」は台湾に進出し、現地合弁会社経営の和風旅館「日勝生加賀屋」を開業(10/12/18)しました。TVドキュメンタリー番組でも過日放映されましたので、ブログ読者の皆様もご承知と思います。《台湾からも毎年平均1万人弱の観光客が訪れることから進出を決めた》との報道でしたが、当該老舗旅館が国内外共に「顧客満足度(CS)」を高めたひとつの証と言えるのではないでしょうか。
一方、鹿児島・宮崎の両県に聳える「新燃岳(シンモエダケ:標高1,421m)」の噴火が懸念されますが、火山列島の日本は“温泉”でも誇れる環境を保有しているのです。訪日外国人が日本に期待する“新しい魅力”を創造するのは、我々日本人に他ありません。訪日中国人の「ショッピング」のみならず、現地中国でも安全・安心な日本製品は高評価されています。わが国土や日本製品の魅力を再認識して臨むところに、“訪日外国人誘致の新たな道”が開かれるのではないでしょうか。
【ご参照】
●ブログ記事(10/5/21日付)
:『★“上海万博”「知的財産権」侵害に対処するわが国の現状について』。
●ブログ記事(09/12/28日付)
:『観光庁 「訪日外国人旅行者」の現状について』。
【資料】日本政府観光局(JNTO)企画部公表資料。