2009.01.13
人生をあきらめないホームレス販売員
◆世界で販売されている「ビッグイシュー」
世界同時不況の直撃の影響を受け、突然の「派遣切り」で職と住居を同時に失った非正規労働者の実態を毎日のようにメディア報道で見るにつけ、昨夏、初めてホームレス販売員に声をかけて『THEBIG ISSUE JAPAN(第100号)』を購入した時のことを思い出しました。
◆路上販売するホームレス販売員
「派遣切り」による非正規労働失業者に対しては、今通常国会で雇用対策を盛り込んだ「第2次補正予算案」が本日(1/13)衆議院で採決される予定ですが、今回の「派遣切り」に遭遇していなくても、これまでやむなく路上生活を強いられてきたホームレスの存在は、今日始まった訳でないことはご承知のとおりです。当ブログ記事(08/8/6日付)「『ビッグイシュー日本版』を買った!」でホームレス販売員の様子をご紹介しましたが、当該冊子は1991年にロンドン(英)で生まれ、わが国では2003年9月に創刊されました。このフリーペーパー時代に当該冊子は有料で、価格は1冊300円です。ホームレス個々人は販売員として登録され、国内主要11都市の指定路上で、日夜販売に専念しているのが実態です。
◆日本での冊子販売は6年目
「ビッグイシュー日本」の公表資料によると、ホームレスの人々に収入を得る機会を提供するこの事業は、開始当時、①若者の活字離れ、②雑誌の路上販売文化がない、③優れた無料誌が多く有料では買ってもらえない、④ホームレスからは買わないという“4重苦”を根拠に、日本では100%失敗すると目されていたようです。日本での販売開始以来6年目に入りましたが、販売員には制服もマニュアルもなく、“Act Naturally”で販売員のハートだけが拠り所のようです。各販売員は、当該冊子名のロゴ入り「赤キャップ」を被り、「顔写真入り身分証明書(販売者番号記載)」を首に掛け、「ビッグイシュー行動規範(8項目)」を遵守するよう事前に指導を受けているという事実は、ホームレス販売員へのヒアリングで知りました。彼らの目標は、自らの力で生活を立てているという自覚と誇りに相当する「自立」であり、次の3ステップがあります。即ち、①1泊1,000円前後の簡易宿泊所等に泊まり路上生活から脱出(25~30冊/日の販売で可能)、②自力でアパートを借り、住所を持つ(35~40冊/日の販売、1,000円程度/日を貯金、7~8ヶ月で敷金を蓄える)、③住所をベースに新たな就職活動をするというのが具体的な自立目標で、販売員の多くは第2段階に挑戦中のようです。
◆“ホームレスという人種はいません”
「派遣切り」で住居を喪失した非正規労働者に対し、離職後引き続き住居を無償提供した場合や、住居に係る費用を負担した事業主に対しては、「離職者住居支援給付金(仮称)」が創設され、遡及適用(08/12/9)される等住居確保の道が予定されていますので、前掲のホームレス販売員と比較すると、非正規労働失業者は、僅かながら恵まれた状況下にあると言えるのかもしれません。年末に発足した「年越し派遣村(東京)」の登録村民約500人のうち、280人が生活保護の申請をしたとのことですが、われわれ国民は、憲法第25条で保障されているとおり、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有」しています。ただ、非正規労働失業者及びホームレス販売員の両者共に、最終目標は「自立」のほかありません。そして、「ビッグイシュー」がアピールしている次の文言が印象に残っています。「ホームレスという人種はいません。ホームレス状態に置かれた人がいるだけです。それはあなたのとなりのできごと。」と。そのタイトルは、「人生をあきらめない」です。
参考:「有限会社ビッグイシュー日本」公表資料。厚生労働省職業安定局公表資料。