2010.11.09
★生物多様性条約締約国会議 自然界との共生が問われる“人間社会の在り方”【第1000号】
◆「COP10」は閉幕したが
過日、『生物多様性条約第10回締約国会議(COP10):名古屋。10/10/18~29』は閉幕しましたが、その取組みはこれからがスタートです。
勿論、本会議開催前から参加国によって行われた分科会(会合)における活発な議論がベースとなって本会議に繋がっていたのですが、今回の「COP10」では、生物利用によって得られた利益配分を定めた『名古屋議定書』と、生物保全を目的とした『愛知ターゲット』が採択されました。ただ、肝心なのは今後の各国の取組み姿勢であり、国内の関連法等の整備が求められることになるのですが、その取組み前に必要なのは『名古屋議定書』における50ヶ国の批准であり、わが国は来年との見通しです。また、『愛知ターゲット』は2020年までの10年間の努力目標(動植物を保護するための区域の数値目標等)で、採択された目標は中間値の低い目標で合意となったのですが、そうかと言って、容易に達成可能であるとは決して断言できるものではないと思います。
◆もうひとつの柱は“地球温暖化に伴う世界的危機”
と言うのも、そもそも『生物の多様性に関する条約:Convention on Biological Diversity(CBD)』は、既存の国際条約(ワシントン条約、ラムサール条約等)を補完し、生物の多様性を包括的に保全して生物資源の持続可能な利用を行うための国際的な枠組みを設ける必要性に迫られて国際議論されているものです。
そして、もう一方の柱として、地球温暖化に伴う世界的な危機と直接的に関連しているからです。昨年の「国連気候変動首脳級会合」における鳩山元首相が全世界に向けた演説(「鳩山イニシャティブ」:09/9/22)では、温室効果ガスの削減目標を「2020年までに25%削減(対1990年比)をめざします。」と公言し、その時点では日本のヤル気をアピールしましたが、某外国紙が日本の首相を“まるでメリーゴーランドだ”と揶揄したとおり、首相が代わった今は掛け声倒れに終わった感は否めません。果たして、日本はこの先10年にいかに臨むつもりなのでしょうか。
◆“年間約4万種の生物”が危機に瀕する現実
振り返れば、過去に開催された「COP6(第6回締約国会議:ハーグ(和蘭)。02/4/7~02/4/19)」の本会合では、生物多様性条約発効(93年)10年間の議論を集大成して優先課題とされた決議(4大項目)が採択され、その中のひとつである「条約の戦略計画」として、生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという「2010年目標」が含まれていたのです。まさに、これまでの経緯を前提として「COP10」に臨んだ訳ですが、その検証が十分なされたのか否かは正確に把握していません。しかしながら、わが地球上で“年間約4万種の生物が危機に瀕している”という現実に直面しているのは明白な事実のようです。
◆“人間には自然が必要”
勿論、われら「人間」も生物の種のひとつですが、未来の「生物系の多様性」、「種の多様性」、「遺伝子の多様性」の運命を左右するのは、他でもない私たち「人間」に託されていると言っても過言ではないでしょう。こうした責務に迫られた「人間」に対し、「COP10」関連イベントで会見した米国人気俳優のハリソン・フォード氏(NGOコンサベーション・インターナショナル副理事長)のメッセージ(10/26)が非常に印象的でしたので、最後にご紹介させていただきます。それは、“自然は人間を必要としないかもしれないが、人間には自然が必要である”と。今、まさに自然界と共生する“人間社会の在り方”が問われているものと思います。
【参考】環境省自然環境局「生物多様性センター(Biodiversity Center of Japan)」公表資料。外務省公表資料。