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2011.05.24

★国民は“ハイリスク内閣”に不安を感じている

◆海水試験注入開始・停止は“東電の独断”

 東日本大震災による「福島第一原発」の爆発火災事故勃発に伴い、「3/12の東京電力福島第一原発1号機への海水注入に関する事実関係」について、政府・東京電力統合対策室は、「5/21日付の公表内容」を翌日(5/22日付)に一部訂正の発表をしました。当該発表資料(訂正版)によれば、《東電の海水試験注入開始・停止は、官邸には報告されていなかった。※東電担当者から保安院に口頭連絡したが、保安院側にはその記録はない。(原文のまま)》と訂正されたのです。

◆「訂正版」公表で実証?された「首相釈明」

 また、当該資料によれば、菅首相の「海水注入中断の指示否定」の釈明どおり、総理からの指示(18:00~18:20ごろ)は、海水注入による冷却の実施について、原子力安全委員会、原子力安全保安院、東京電力等が、《総理から再臨界の可能性について問われた原子力安全委員長が可能性はゼロではないとの趣旨の回答をしたので、ホウ酸投入などそれを防ぐ方法を含め検討》するものであり、《19:55 総理より海水注入の指示》に至ったという公表でした。従って、この経緯報告によれば、菅首相の釈明は一応証明されたことになるのです。

◆委員長は「発言訂正」

 ただ、当初、班目(マダラメ)春樹委員長(内閣府原子力安全委員会)は、「再臨界の危険性がある」との同氏の進言をしたことが海水注入停止の要因であったとの一方的な政府の説明に対し、さすがにその道の専門家として憤慨されていましたが、結局、政府と折り合った形で、首相からの再臨界の可能性を問われ、“可能性はゼロではない”との趣旨の回答をしたとの発言に改められたのです。これで、同委員長の立場も、なんとか格好がついたというところでしょうか。

◆これは一体何だったのか?

 原子力安全・保安院を含めた政府と東京電力による“検証”と言えば聞こえは良いのですが、この珍現象は“互いに責任の擦り合い”にほかならず、国民を無視した“妥協内閣”と言わざるを得ません。この国の“低次元のリスク管理(ハイリスク)”に、日本国民のみならず、世界に嘲笑される小話と言えるのではないでしょうか。

◆見逃せない“「SPEEDIデータ」の未報告”
 更に、福島第一原発事故に伴う放射性物質の飛散状況を予測する『緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)』のデータが、震災翌日(3/12)に原子力安全・保安院から官邸(危機管理センター)にファクスされていたにもかかわらず、首相に届いていなかったという事実が、枝野官房長官の記者会見(5/20)で明らかにされたのです。件(クダン)の内容を見逃せないのは“放射能汚染”に関わる重要事項であり、単なる事務報告の失念で済まされる訳にはいきません。“ハイリスク内閣”の下で生活する国民からすれば、「原発のリスク管理」云々以前に、官邸と経済産業省原子力安全・保安院と東京電力株式会社の三者連携を蜜にしていただくよう、ただただ切望するばかりです。
【資料】経済産業省原子力安全・保安院公表資料。政府・東京電力統合対策室公表資料等。