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2008.05.08

指揮命令の体制整備こそ、派遣と請負の重要区分 (請負シリーズ8)

◆「区分」後の放置で「偽装請負」に
 製造業における請負事業は、バブル崩壊後の1990年に急増して以来、「人件費・労務管理コストの削減」、「雇用調整が容易」、「生産変動への対応」※1)を主な受入れ事由とし、製造業務が労働者派遣事業の適用対象業務とされる2004年3月まで増加※2)してきましたが、同法で労働者派遣事業と請負事業を、指揮命令関係で明確に区分されることになったにもかかわらず放置されてきた為、偽装請負等として社会問題化したのではないかとみられます。
◆発注者等から指示がある「混在職場」
 すでに当ブログ記事(請負シリーズ6)でご紹介のとおり、請負事業者の就業現場の「建屋・ラインを問わず、少なからず受入事業所直用の労働者(社員)と混在した就業環境」は、請負事業者が派遣労働者の身近で就業しているからこそ指揮命令が曖昧になる恐れがあり、作業区分を明確にする必要があると述べた訳です。就業場のハード仕様等の区分に加え、とくに、「ラインでの混在がある職場などでは、発注者の労働者が現場で直接構内下請事業者の労働者に対し指示をすることがある」※3)等の存在が問題なのです。物の製造業務に派遣労働者(50人超)を従事させる事業所では、一般の派遣先責任者とは別に、「製造業務専門派遣先責任者」の選任を義務づけられており※4)、また、請負事業者は請負現場に責任者が常駐するのですが、「請負現場の従業員規模が小さい場合等には、責任者が他の請負現場とかけもちで担当し、定期的な巡回で対応している」※3)場合もあり、前記のように、発注者から、または、発注者のラインを通じて請負事業者の労働者に指示が伝達されるという事態も発生している現実があるのです。
◆「請負ガイドライン」は遵守されているか
 この点について、国は、「請負事業主が講ずべき措置に関するガイドライン」※5)で、次のとおり、規定(一部抜粋)しています。第一は、「事業所責任者の選任」として、(1)請負事業主は、発注者の事業所ごとに、自己の雇用する労働者(個人事業主本人及び法人事業主の役員を含む)の中から、請負労働者100人につき1名以上の事業所責任者を選任すること。(2)請負事業主の事業所ごとに事業所責任者を2人以上選任する場合は、そのうち1人を統括事業所責任者(請負契約の締結又は変更に関する事項を行う)とし、事業所責任者の業務を統括させること。(3)事業所責任者を選任した場合には、その氏名、役職及び請負契約の締結又は変更に関し与えられた権限の範囲を発注者に通知すること。第二は、「工程管理等責任者の選任」として、(1)工程管理等責任者は、前者(1)と同様の基準で選任し、(2)事業所責任者の兼任が可能。また、(3)一の業務のまとまりについて工程管理等責任者を2人以上選任する場合は、そのうち1人を統括工程管理等責任者とし、工程管理等責任者の業務を統括させることです。
◆「請負チェックシート」活用で「指揮命令体制」整備を
 要するに、請負現場で派遣との区分を明確にするには、請負現場の現実の就業状況を踏まえ、パーティション設置等によるハード面の変更や、サブラインをすべて請負に設定する等の工夫を含め、責任者の配置状況や作業指示について、「区分基準」※6)をベースとし、「適正な請負4要件」※7)を満たすべく指揮命令の体制整備が大切です。そして、発注者(注文主)から請負業者の労働者へ指揮命令が無い就業環境が、請負完成のポイントです。具体的な取組みチェックは、請負事業主対象の「ガイドラインのチェックシート(48項目)」※5)が大変わかり易いので、自主チェックとして活用されることをお勧めします。
※1)「職場における業務請負に係る安全衛生管理の実態に関する調査報告書」中央労働災害防止協会。当「人事総務部」ブログエントリー「請負シリーズ6※2)」ご参照。
※2)製造業の業務請負の事業所で働く労働者数:86万6千人(2004年8月時点。厚生労働省推計)。
※3)ヒアリング調査(派遣元6事業所及び派遣先12事業所):中央労働災害防止協会。
※4)「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年7月5日法律第88号。昭和61年7月1日施行)」第41条(派遣先責任者)及び「同法律施行規則(昭和61年4月17日労働省第20号)」第34条(派遣先責任者の選任)ご参照。
※6)「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年4月17日労働省告示第37号)」。
※7)職業安定法施行規則第4条第1項(昭和22年12月29日労働省令第12号。最終改正:平成19年8月3日厚生労働省令第102号)。
参考:※5)「製造業の請負事業の雇用管理の改善及び適正化の促進に取り組む請負事業主が講ずべき措置に関するガイドライン(平成19年6月29日)」厚生労働省職業安定局公表資料。「業務請負・労働者派遣の安全衛生管理(木村大樹著)」中央労働災害防止協会。「派遣元責任者必携2007年版Ⅱ労働者派遣法(日本人材派遣協会編著)」社)財形福祉協会。「労働者派遣法の改正点と実務対応(安西愈著)」労働調査会。