2008.05.07
請負推進の順序が肝要 (請負シリーズ7)
◆「請負」開始時点が重要
近年、偽装請負が社会問題となっていますが、その原因は、労働者派遣法の改正による法規制の緩和のせいである、と言い訳にすることは毛頭できません。偽装請負には偽装委託も含まれており、契約名義を、請負契約や業務委託契約にすればよいという訳でもありません。名実共に、請負や業務委託と認められるためには、請負を推進するスタート時点が肝心です。
◆まず「区分基準」に適合させる
本来的に、労働者派遣法にいう「請負」は、民法の「請負(同法第632条)」の定義とは異なり、「委託(準委任:民法第656条)※1)契約」も含むものと考えられており、業務委託契約等※2)を含む広義の概念でとらえられています。たとえ契約に請負という名称を使用せず、委託契約という名称で契約している場合でも、その業務の実施は、労働者派遣事業に該当するか否かの対象となり、「区分基準」※3)が準用されるのです。従って、請負は、「区分基準」に適合させることからスタートしなければなりません。その要件は、①労働者の業務の遂行について、請負事業者等が直接指揮監督を行うこと。②その業務を請負事業者等の業務として、注文主から独立して業務を処理すること。③請負事業者等がその有する能力に基づき、その責任で処理すること。で、これらの要件を満たさなければならないのです。前述のとおり、たとえ請負契約という形式をとっていても、請負の実態が伴わなければ、労働者派遣法の適用を受けることになるのです。
◆「偽装請負」は多種の形態
次に、偽装請負で問題視されている「雇用と使用の実質的分離」からすると、注文主や委託先には指揮命令権が無いにもかかわらず、受注者・受託者の労働者を指揮監督して業務を遂行している場合が該当します。偽装請負や偽装委託の実態は、二重派遣・請負、多重派遣・請負、偽装出向等で、「注文主と労働者との間に指揮命令関係を生じない」という請負の基本に逆行した形態を呈していることがその要因です。
◆事業許可無し「請負」は論外
とりわけ、製造業務における労働者派遣事業が解禁されたにもかかわらず、偽装請負が解消しない背景には、製造業の国内回帰への影響や、労働者派遣事業へ移行した場合のコスト高等の問題があるとみられますが、企業のコンプライアンスが問われる今日において、労働者派遣事業の許可を受けること無く、請負を偽装しているという企業態勢にこそ根源があるのではないかと推察されます。従って、請負の推進は、まず、①「区分基準」を満たし、②指揮命令関係が明確化できる実態が在ること、の順で請負の最低要件を充足することが肝要なのです。
※1)準委任:この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
※2)委任:(民法第643条)委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
※3)「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年4月17日労働省告示第37号)」。
参考:当「人事総務部」ブログエントリー「労働者派遣とコンプライアンス」、「請負推進の重要ポイント」等ご参照。「派遣元責任者必携2007年版Ⅱ労働者派遣法(日本人材派遣協会編著)」社)財形福祉協会。「人事・労務管理シリーズⅥ―労働者派遣編―派遣を使う、活かす。ここがポイント(全国労働基準関係団体連合会編著)」労働調査会。「偽装請負-労働者派遣と請負の知識-(外井浩志著)」労働調査会。