2008.05.29
有期労働契約において使用者が講ずべき措置等について
全国の都道府県労働局では、毎年定期的に「労働者派遣・請負適正化キャンペーン」が実施されますが、その労働者派遣事業に係る指導監督実施結果※1)による是正指導の内容(重複計上)をみると、各都道府県労働局により、該当件数は異なりますが、派遣元及び派遣先に共通し、(a)「労働者派遣契約書が未作成又は契約書内容に不備事項がある」、(b)「就業条件が明示されていない又は就業条件明示書に不備事項がある」、(c)「抵触日の通知を受けずに派遣(または、抵触日の未通知)」、(d)「抵触日を超える派遣(抵触日を超える受入)」、(e)「派遣元管理台帳の不備(派遣先管理台帳の不備)」等が挙げられます。是正件数の絶対数が多いのは派遣元で、とくに、前記の(a)及び(b)について顕著です。
これらの是正指導内容は、派遣労働者にとっては大変重要な問題であり、労働者派遣契約書未作成・不備や、就業条件不明示・不備等は、労働契約に係る根幹を成すものであり、有期労働契約(期間の定めのある労働契約)を前提とする派遣労働者の立場を一層不安定にする要因です。実際、派遣契約期間※2)は、①「3ヵ月以上6ヵ月未満(31.0%)」、②「6ヵ月以上1年未満(29.4%)」、③「1ヵ月以上3ヵ月未満(20.4%)」の順に多く、1年未満の短期労働契約が約8割を占めています。そして、契約更新の繰り返しで継続しているのが、派遣労働者の現実です。
従って、と言うよりも、短期労働契約だけに、突然、契約更新をせずに期間満了をもって退職させる等の、所謂「雇止め」をめぐるトラブルが発生し、それを防止するために、有期労働契約に関する改正労働基準法(平成15年7月4日法律104号公布)が施行(平成16年1月1日)されました。即ち、改正法では、有期労働契約※3)において、一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約(有期の建設工事等)を除き、その期間が1年を超える労働契約について、契約期間の上限は原則3年に、また、高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者や、満60歳以上の労働者との有期労働契約の契約期間は上限5年に延長が認められ(同法第14条第1項)、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(同法第14条第2項及び第3項。平成15年厚生労働省告示第357号)」が策定されました。
当基準は、言わば、使用者が講ずべき措置について定めたものであり、(a)有期契約労働者に対して、契約締結時に契約更新の有無を明示、契約更新する場合又はしない場合の判断基準を明示しなければなりません。また、(b)雇入れ日から起算して1年超継続勤務している有期労働契約者への「雇止め」をする場合は、契約期間満了の30日前までの予告をしなければなりません。その他、「雇止め」の理由の明示を請求された場合は、遅滞無く証明書を交付しなければならないと規定しています。
他方、有期契約労働者は、労働契約について、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。(労基法第15条、労基法施行規則第5条)」と定められていることを念頭におき、契約締結に臨んでください。そして、有期契約労働者は、有期労働契約期間の初日から1年を経過した日以後において、使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができますので、労働者派遣契約を中途解除した事業所(25.6%)※2)の、「派遣労働者の技術・技能に問題があった(43.2%)」及び「派遣労働者の勤務状況に問題があった(同%)」という中途解除理由(第一位)を十分に踏まえた上で、自らの権利行使を検討してください。但し、前記の「一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約(有期の建設工事等)」及び「契約上限5年となる労働契約」は、除外されます。
※2)「派遣労働者実態調査結果の概況(平成17年9月)」厚生労働省大臣官房統計情報部公表資料。
※3)改正法が対象とする有期労働契約:①1年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、最初に労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合。②1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合。
参考:※1)「『労働者派遣・請負適正化キャンペーン』実施結果(平成19年12月27日)」大阪労働局公表資料。「『中・四国ブロック 派遣・請負適正化キャンペーン』の実施結果について(平成20年1月28日)」広島労働局公表資料。「労働基準法の一部を改正する法律の施行について(施行通達)」労務安全情報センター資料。