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2008.10.30

「日雇労働求職者給付金」で救済できるのか(№18)

◆受給した派遣労働者は1人
 これまでの相次ぐ違法派遣で、労働者派遣法改正案は、日雇い派遣や雇用期間が30日以内の労働者派遣は原則禁止等が盛り込まれました。わが国内では米国金融市場危機の影響による実体経済減速や、衆議院解散・総選挙は先送りの様相で政局も混乱を極める中、厚生労働省は、「労働者派遣法改正案要綱」を取りまとめ、労働政策審議会に諮問した(10/24日付)ところです。
 厚生労働省の調査によると、昨年、日雇雇用保険の対象が派遣労働者にまで拡大されたにもかかわらず、運用変更後の1年間で受給した派遣労働者が1人に止どまっていることがわかりました。このセーフティネットが機能していない実態は、周知不足と手続きの煩雑さが原因とみられていますが、果たしてそれだけが直接の原因なのでしょうか。
◆「26日間(2ヶ月)労働」で最低給付は13日分
 日雇派遣労働者が失業した(派遣会社に予約登録していたが派遣されなかった)場合、雇用保険制度の給付金である最低条件の「日雇労働求職者給付金」支給の権利を得るためには、失業した月の前月及び前々月の2ヶ月間で最低26日以上の仕事をした証、つまり、「雇用保険日雇労働被保険者手帳(日雇手帳)」に雇用保険印紙(賃金日額による等級区分で印紙保険料日額も異なる)の貼付が必要なのです。
 例えば、具体的に貼付印紙枚数が26枚~31枚の場合、給付を受けようとする月の最大給付日数はわずか13日分に相当する給付金しか支給されないのです。給付等級区分で最低の3級の場合は、給付金日額4,100円×13日=5万3,300円です。この金額を、賃金日額が1万1,300円以上(1級)の日雇い労働被保険者の場合(給付金日額7,500円:1級)と比較すると、その差額は4万4,200円となります。企業のコスト削減の中、実際の世間相場として、賃金日額1万円以上の日雇派遣労働者数は決して多いとは言えない状況と推測します。
◆規定就労日数の確保が困難
 日雇労働求職者給付金を受給するには、指定安定所(全国5ヵ所)へ行って、前掲の①「日雇手帳」、②「労働者派遣契約不成立証明書」、③「失業の認定(及び不就労日)に関する届書」を提出し、「失業認定」を受けなければならないのです。これらの手続きをみると、この1年間で申請が4件に留まったのは、冒頭に記したとおり、受給手続きの煩雑さも要因の一つと考えられます。しかし、減速経済で非正規雇用が絞り込まれている中では、日雇派遣労働者が2ヶ月連続で最低条件の規定就労日数を確保できるのかという企業の労働雇用環境にこそ要因が求められると思います。
◆新たなセーフティネットの構築を
 ハローワークの相談支援窓口では、「生活支援」と「居住支援」の貸付金給付(要件有り)は開設されていますが、返済義務が重く圧し掛かるだけです。その日暮らしの生活を強いられている日雇い派遣労働者を救済するには、せめて、常用雇用時の給料日までの生活費を失業保険で給付する等の新たなセーフティネットを備えた改正法案になることを切望する次第です。
参考:厚生労働省公表資料。公共職業安定所労働課ヒアリング。