2008.04.22
外国人労働者の適正な雇用管理に関する事業主の留意点
社会のグローバル化により、近年、わが国における外国人就労者数が増加してきたのは、既に当ブログ※1)でご案内のとおりです。国は、外国人労働者の受け入れの基本的な考え方として、経済社会の活性化や国際化を図る観点から、専門的・技術的分野の外国人労働者については積極的に推進する方針に立脚していますが、単純労働者については、単に少子高齢化に伴う労働力不足への対応として外国人労働者の受け入れを考えるのは適当ではない、としています。この考え方を踏まえ、昨年、「雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律」の成立(2007年10月1日施行)に伴い、事業主に対し、外国人の適正な雇用管理をするため、「外国人雇用状況報告制度」が義務化されました。
そのポイントは、①事業主は、外国人労働者(特別永住者を除く)の雇入れ・離職時に、その氏名、在留資格、在留期間等を厚生労働大臣(公共職業安定所長)へ届出することが義務づけられたことです。また、②外国人労働者の雇用管理の改善及び離職時の再就職援助について事業主の努力義務として加えられ、事業主が適切に対処するために必要な指針(「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」)が策定されたという2点です。①については、提出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金が課せられます。改正時点で、既に雇用している外国人労働者の届出期限は、今年の10月1日までとなっているので留意してください。また、②の指針では、外国人労働者を常時10人以上雇用するときは、「外国人労働者雇用労務責任者」を選任すべきと定められています。
実際、「2003年データ」※2)によると、外国人の不法就労従事者は34,325人で、所謂「入管法」※3)違反者の74.8%を占めています。因みに、不法就労者の就労内容の上位は、男性は①建設作業者、②工員、女性は①ホステス等接客、②工員の順です。国籍は108ヶ国に及び、多国籍化の様相を呈しています。従って、事業主による在留資格等の確認が、まさに、不法就労の防止を図ることに直結するので重要です。
そこで、事業主による外国人労働者の就労可否の確認事項をまとめましたので、以下をご確認ください。①入国要件を備えているか:有効な「旅券(パスポート)」または「外国人登録証明書」、「査証(ビザ)」。②就労資格を有しているか:「就労資格証明書」または「資格外活動許可書」※4)の有無。③在留期間を超えていないか:在留資格※5)ごとに定められている期間を超えていないか、の3点です。
とくに、パスポートは偽造されるので、旅券面の「上陸許可証印」の確認が重要です。また、「外国人登録証明書」はオーバーステイでも発行されますので、パスポートと同様、確認が必要です。「査証(ビザ)」があっても、就労可能な在留資格有りとは限りませんので十分留意してください。また、既雇用の外国人労働者については、届出期限前に離職した場合でも、雇い入れと離職の届出はまとめて行うこともできますので、今年の届出期限までに完結しておくことが重要です。勿論、留学生が行うアルバイトも届出の対象となりますので、上記②の「資格外活動許可」を得ていることも確認してください。
尚、不法滞在者や就労することのできない在留資格を有する外国人に不法就労活動をさせたり、他の会社等に斡旋したりした場合等は、「不法就労助長の罪」として、罰金は300万円に引き上げられています(改正入管法:平成16年法律第73号。同年12月2日施行)。
※1)及び※2):各々、下記参考ご参照。
※3)「入管法」:「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律(平成18年5月24日法律第43号)」(改正入管法2006年11月24日施行)。
※4)「資格外活動許可書」:法務大臣の許可が必要です。留学生・就学生・家族滞在の人については、勤務先を特定することなく事前に申請できますが、他の在留資格の外国人は、就労先が内定した段階で申請することになります。
※5)「在留資格」:日本がどのような外国人を受け入れるかについて、その外国人が日本で行おうとする活動目的を基準に類型化して定めたもの。同資格27種類のうち、報酬を受ける活動を認められたものは20種。特定活動(同資格)は、個々のケースによって判断されます。就労できない在留資格は、文化活動、短期滞在、留学、就学、研修。
参考:※1)当「人事総務部」ブログエントリー「外国人労働者の就労について」ご参照。厚生労働省職業安定局HP資料。※2)「東京外国人雇用サービスセンター(東京都港区)」HP資料。「改正入管法の一部施行に伴う法務省及び法務省告示の整備について」法務局入国管理局資料。「混成職場の人事管理と法律知識Q&A(産労総合研究所編)」経営書院。「最新外国人労働者雇用管理マニュアル(石川秀樹弁護士他共著)」新日本法規出版。