派遣&請負の情報サイト

人材派遣や請負そして厚生労働省(労働局)の最新情報を発信しています。

メニューを開く
メニューを閉じる

2009.11.18

反社会的勢力による被害防止のための企業防衛態勢とは

 過日、《暴力団など反社会的勢力から不当な要求を受けたことがある国の出先機関は141機関で、うち8機関(5.7%)が最終的にその不当要求に応じたとの回答があった》※1)とマスコミ報道(8/21)がありました。要求内容は、《物品購入や機関紙の購読、寄付金提供などが多かった》とのことです。

◆全国に設置されている「都道府県暴力追放運動推進センター」

 冒頭、唐突に記載した内容は反社会的勢力に対する公的機関への調査結果報道ですが、民間企業でも同様の実態があり、“対岸の火事”と傍観している場合ではありません。民間企業がこのような反社会的勢力に対応するには、「全国暴力追放運動推進センター(略称:全国暴追センター)」※2)が設けられていますので、その機能を熟知し、自社の防衛態勢を整えて臨むのが賢明と思います。
 当該センターは、所謂「暴力団対策法」※3)に基づいて指定されましたが、実際の窓口は全国47都道府県に設置された「都道府県暴力追放運動推進センター」及び「都道府県防犯協会」(いずれも正会員)で、暴力団員による不当な行為の防止及びこれによる被害の救済に寄与することを目的として設立(公益法人)されました。

◆「不当要求防止責任者講習」を実施する暴追センター

 誰もが暴力団等に係りたくないのは当然ですが、前記の「都道府県暴追センター」は相談活動のみならず、「暴力団と対峙する企業事業所等の責任者に対する講習の実施」等を日常業務としていますので、実際にご活用されることをお薦めします。蛇足ながら、筆者※4)はかつて某大手民間企業で総務部長職に就いていましたので、職務の一環として異動地で管下拠点長等と共に複数回受講した経験があります。因みに、金融業界における対策として、全国銀行協会は、すでに諸規定に盛り込む「暴力団排除条項の参考例」を制定しており、会員銀行宛に通知(9/24)しました。現行ルールでは、反社会的勢力とわかっただけでは取引を破棄できないため、顧客がそれと判明した場合に契約をすぐ破棄できる新ルール(雛型)を年内にも公表するようです。
 この特殊な研修受講をお薦めする事由を述べる前に、前掲の全国47都道府県暴力追放運動推進センターが実施した調査結果(2008年:「企業・行政機関の、個人に対する私生活に関する不当要求等の相談取扱状況」)※5)を見ると、(1)「要求内容(その他を除く)」の第1位は「機関紙や情報誌の購入要求・一方的送付(うち、購入要求:65.7%)」で全体の約36%、(2)第2位は「債務履行要求」で約15%、(3)第3位は「架空請求」で約7%を占めており、数多くの不当要求に対する相談があったことを改めて認識していただきたいと思います。それでもこのような相談件数は近年減少傾向で、昨年(08年)の相談件数は、5年前(04年:100)と対比すると42%まで減少していますが、不当要求が現実に存在する以上、安閑としている訳にはいかないのです。

◆企業防衛態勢に臨む

 つまり、前掲の研修受講をお薦めする事由は、当該調査結果で明らかのとおり、民間企業でも実際に不当要求に困惑し、それに屈してしまっている実態があるからです。人事総務部門の業務に従事されている皆様にとっては、業務年度が変わる人事異動時期等は特に要注意で、前任者からの引継ぎ資料等を参照し、現在の定期購読誌及び郵便物等を一つずつきちんと確認してください。なぜなら、反社会的勢力は民間企業の人事異動時等を好機とし、一方的な「送り付け」により名簿や機関紙等の購入を迫ってくる事例が散見されるからです。そして不当要求を断った場合には、反社会的勢力による脅迫めいた電話や訪問等が発生する可能性も皆無とは言えないからです。

◆“指定暴力団の勢力図”も把握できる

 わが国内における暴力団の勢力図は国内各地域によって異なりますが、その実態を把握する観点からも、異動のたびに所轄地の当該暴追センターの講習を受講する意義はあると思います。また、最近は全国最大勢力の某指定暴力団は、《組員であることを示す「代紋(だいもん)」を名刺に記載しないように指示していた》ことも判明(兵庫県警調査)しており、一般企業を隠れ蓑としているのが現状です。従って、《暴力団関係企業等と知らずに結果的に経済取引を行ってしまう可能性》があり、最終的には《企業自身に多大な被害を生じさせるものであることから、反社会的勢力との関係遮断は、企業防衛の観点からも必要不可欠な要請》※6)として受け止める必要があるものと考えます。

◆5つの「基本原則」
 最後に、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」より、その「基本原則」を以下に抜粋しました。詳細情報は当該講習時に入手(関係資料を含む)できますので、これまで受講ご経験の無い企業の人事総務部門の皆様には、企業のリスク管理の一環として是非ご受講されることをお薦めします。
【反社会的勢力による被害を防止するための基本原則】
○組織としての対応 ○外部専門機関との連携 ○取引を含めた一切の関係遮断 ○有事における民事と刑事の法的対応 ○裏取引や資金提供の禁止
※1)警察庁及び日本弁護士連合会等による共同調査(09/6月)。
※2)財団法人全国防犯協会連合会(東京都千代田区)が指定(92/12/3)されている。
※3)「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」平成3年5月15日・法律77号。平成4年3月施行。略称:暴対法。
※4)当ブログ記事(09/6/18日付):『価値ある「自己への挑戦」』ご参照。
※5)企業・行政機関に勤める個人の私生活に関して、機関紙や情報誌の購入要求・一方的送付・架空請求・債務履行要求・損害賠償請求・金品要求等を行うもの。
※6)平成19年6月19日付:犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ。
【参考】全国暴力追放運動推進センター公表資料。全国銀行協会公表資料。日本経済新聞記事。