2011.04.16
★東海・東南海・南海地震の同時発生時に「浜岡原子力発電所」は津波に耐えられるか
◆現在進行中の「福島第一原発」事故
「東日本大震災」の発生(3/11)で「福島第一原子力発電所(東京電力)」が被災し、爆発を伴う火災等の事故が勃発しました。“放射能汚染”の不安は震災後1ヶ月を経過した現在も続いており、一国民として本当にやりきれない思いでいます。当該原発において、放射能汚染水の移送処理作業は勿論のこと、まずは、外部電源や発電機等の活用で、一刻も早い原子炉の安定冷却と放射能汚染の沈静化を望むばかりです。
◆同時発生も想定の「東海・東南海・南海地震」
当該原発事故を踏まえ、次に心配するのは『浜岡原子力発電所(中部電力)』※です。当該原子力発電所は「静岡県御前崎市佐倉5561」に所在し、現在は「3~5号機(電気出力合計:361.7万kw)」が稼動しています。心配事由の第1点目は、「浜岡原発」の所在地を含めた東海地方以西から四国に亘って、「東海・東南海・南海地震」が同時発生する場合も想定(03/9/17:中央防災会議公表資料)されているからです。
※原子炉形式は「沸騰水型」。「1・2号機」は運転終了(09/1/30)。
◆震源域が30mズレた「東日本大震災」
前者、東日本大震災では、震源は宮城県牡鹿半島の東南東約130kmの海底下でしたが、「三陸沖中部~宮城県沖~福島県沖~茨城県沖」の広域に亘り、過去発生した複数の大地震の震源が連動(震源域:南北約500km、東西約200km)して発生したと分析されています。その結果、国内観測史上最大(M:9.0)の“超巨大地震”となり、日本海溝に沿って、陸側の北米プレートに太平洋プレートが沈み込み、プレート境界が破壊された為、前掲の震源域が最大約30mズレ動いたとされています。
◆3連動型地震発生時の「死者数は約2万5千人」
他方、後者の「東海・東南海・南海地震」は、駿河・南海トラフ等に沿って、陸側のユーラシアプレートにフィリピン海プレートが沈み込むというプレート境界型地震で、同時発生を想定した場合(M8.7)の被害は、21府県で「死者数合計:2万4,700人(うち、津波死者数:9,100人)」と被害想定(但し、最大値。前掲同会議)されているのです。
◆緊急臨時会議は「浜岡原発の津波対策」
東日本大震災の発生後、中部電力株式会社は経済産業大臣から指示文書を受領(3/30)し、緊急安全対策の実施状況についての報告と保安協定の変更を求められました。そして、静岡県の「防災・原子力学術会議」の緊急臨時会議(4/6)では、学識経験者の他、中部電力関係者も出席して「浜岡原子力発電所の津波対策について」議論されたのです。
◆未設置の「防波壁」
要するに、中電側の説明では「津波の想定水位:最大8m」に対し、「砂丘は10~15m」で「防波壁は12m以上」とすること、また、非常用ディーゼル発電機は、「福島第一原発」がタービン建屋の地下1Fに存置されているのに対し、「浜岡原発」は原子炉建屋の1Fに存置しているとのマスコミ報道でした。但し、当該防波壁の設置は、現段階では東日本震災後、新たに建設設置するという予定に過ぎず、たとえ「高さ15m以上」の防波壁が設置されたとしても、「東日本大震災」の被害の甚大さに思いを廻らすと、決して安閑とはしていられない心境に陥ります。なぜなら、想定される津波の大きさや「防波壁」設置費用の制限等により、自ずと防波壁の規模も変わってくることを大いに懸念するからです。
◆「活断層」は原発の隣町にある
閑話休題、心配事由の第2点目は、かなり遡及して恐縮ですが、“「浜岡原子力発電所」の敷地内に断層が存在することが確認されている(中部電力)”という事実です。この事実については、《詳細な地質調査の結果、地震を起こしたり、地震に伴って動くものではないことを確認しています。》と、中電HPに明記されています。当該HPで続きを見ると、原子力発電所の建設用地を決める際には、「ボーリング調査」、「試掘坑調査」、「弾性波探査」、「トレンチ調査」等の実施が前提とされており、《徹底した地質調査をおこない地震の原因となる活断層を避けて》おり、前記の《調査などにより活断層のないことを確認しています。》と記されています。念の為、過日ブログでご案内した「活断層地図(下記)」を見ると、「浜岡原発」に隣接する町(白羽:シロワ)に“活断層”が存在しているのを確認できました。その場所は、御前崎港のすぐ西側周辺です。
◆“津波の遡上高:37.9m”の現実も踏まえて
前述のとおり、中部電力は「防波壁は12m以上」とする(4/6)としていましたが、折りしも、阪口副社長は、「浜岡原発」の津波対策で「2~3年後を目途に、防波壁の高さを15m以上」とする旨を愛知県知事に説明(4/12)しました。しかし、中電が「15m以上」と発表したのは、東日本大震災で15メートルの津波が押し寄せたことに基づいており、わずか1週間で建設予定の防波壁の高さは変更されたことになります。では、東北大震災で20mの津波が襲来していたとしたら、果たして、当該防波壁の高さも20mに見直すということになるのでしょうか。更に、岩手県宮古市田老(ミヤコシタロウ)地区で発生した津波の“遡上高(ソジョウコウ)が37.9m”にまで達した現実を踏まえると、津波に対する不安は容易に払拭できるものではないと考えます。識者や専門機関等による徹底した科学的調査・分析結果に基づき、真に“安心・安全な防波壁の早期設置”を望むばかりです。
【資料】内閣府公表資料。中部電力株式会社公表資料。防災システム研究所公表資料等。
【ご参考】
●ブログ記事(11/3/26日付)
:「書籍ご案内 『日本の活断層地図-中部・近畿・中国・四国・九州活断層地図』」。