2008.05.12
請負は機械・設備の保守契約を明確に (請負シリーズ10)
◆機械設備等は発注者管理の現状
当ブログ記事:「労災発生状況と関係指針等の認知を」で、請負事業者が使用する機械設備の所有や管理状況※1)をご紹介しましたが、その現状は、発注者が所有しているのが9割を超え、請負事業者の多くが有償で借り受けています。また、機械設備全般の管理は発注者が行い、請負事業者が借り受けている機械設備の補修についても、所有者である発注者が行っているのがほとんどです。
◆双務契約に基づく受託者負担要
今回、請負事業経営上の独立性という観点からみると、所謂「区分基準」※2)で、「機械、資材等が相手方から借り入れ又は購入されたものについては、別個の双務契約※3)による正当なものであることが必要である」と、具体的判断基準が示されています。とくに、「製造業務の場合、注文主の所有する機械、設備等の使用については、請負契約とは別個の双務契約を締結」のうえ、「保守及び修理を受託者が行うか、ないしは保守及び修理に要する経費を受託者が負担していること」が必要なのです。
◆請負の業務独立性保持のため
この双務契約は、民法に名称があることから有名契約(典型契約の一種)と呼ばれており、例えば、売買、請負、使用貸借、賃貸借等をいいます。 当該要件は、機械、設備、資材等の所有関係、購入経路等の如何を問うものではないとするものの、上記のような場合は、請負契約とは別個の双務契約の締結が必要とされていますので、機械・設備に関し、曖昧な賃貸借契約では、派遣と請負の区分が明確でなく、調査対象になります。請負とみなされるには、「自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材又は材料若しくは資材により、業務を処理すること」と区分基準に明示されていますので、注文主の機械・設備等の無償使用ではなく、少なくとも賃貸借契約等の明確な契約に切り替え、当該使用の費用を負担してスッキリさせてください。それがひいては、「単に肉体的な労働力を提供するものでない」という、請負本来の業務の独立性を主張することに繋がるのです。
※1)「職場における業務請負に係る安全衛生管理の実態に関する調査報告書」中央労働災害防止協会。
※2)「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年4月17日労働省告示第37号)」。
※3)(同時履行の抗弁)民法第533条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
参考:「業務請負・労働者派遣の安全衛生管理(木村大樹著)」中央労働災害防止協会。「派遣元責任者必携2007年版Ⅱ労働者派遣法(日本人材派遣協会編著)」社)財形福祉協会。「労働者派遣法の改正点と実務対応(安西愈著)」労働調査会。