2009.06.18
価値ある「自己への挑戦」
◆人事部直申請による「社内公募異動制度」
某大手民間企業の「社内公募による異動制度導入」の新聞記事(6/1日付)※に目が留まりました。少し旧い表現で恐縮ですが、これは所謂“社内とらばーゆ”に相当するものであると思います。当該記事によると、《希望者は直属の上司に連絡せずに応募でき、出向扱いだがグループ会社間の異動もできる》とあります。直属上司に連絡しない事由は、本人の異動意思に反して直属上司に異動を引き止められることを回避するためと推測します。そして、《応募者の上司は(その異動に)反対できない》のです。勿論、《異動者の後任は人事部が探す》ことになります。
◆唐突な「カミングアウト」
当該記事に注目した事由は、十余年前に私自身が実際に“社内とらばーゆ”を経験したことがあるからです。当ブログで唐突に「カミングアウト」することになり恐縮ですが、私の場合も当該記事と全く同様の制度内容でその第一期生となり、当該制度利用の異動結果は某金融新聞記事に掲載されました。この体験結果に基づく私見になりますが、まさに「自己能力の可能性に挑戦する」のは「自己開発」に相当します。グループ企業間の異動とは言え、独立した別会社でこれまで未経験の新分野の業務に従事する訳ですから、それなりの「決意と覚悟」が必要です。
しかし、それ以前に必要なのは、現職務の業務状況(業績等)が良好であることが一番望ましいと思います。現職務や職場に対する不満等の事由で異動を希望するというのでは、単なる現実逃避になってしまいます。あくまでも好業績であることが理想で、前向きな異動志望が根底に無ければ、人事部に対する説得力はありません。従って、今後、当該制度を利用する意思のある人は、まずは現職務に打ち込んで業績を上げる等、むしろ本人の異動が惜しまれるくらい活躍・貢献することに全力を傾注することが肝要であると思います。
因みに、私の場合は、某大手金融機関の地方拠点長から直系のシンクタンク(東京丸の内)新設部署に研究員として出向し、同時に厚生省(現厚生労働省)外郭団体委託研究員を兼務することになり、4年間にわたり調査・研究業務に従事しました。その後、再び本体企業の通常の人事異動に従い、出向前とは別の地方拠点長に異動したという経緯です。但し、この事実は、冒頭の新聞記事に掲載された某大手民間企業や、現在私がビジネスブロガーとして勤務する当研究所とは全く無関係であることを念の為お断りしておきます。
◆価値ある「自己への挑戦」
中堅社員時代に自ら異動希望して別会社へ出向するのは、定年間近に関連会社等へ出向するのとは精神的な面で少し異なるものと想像しますが、実際は「転職」したのと同じくらいのエネルギーを要したのではないかと思います。当時の私は異動の喜びも束の間、調査・研究業務の基礎知識が無いだけでなく、自己の能力を省みず、異動先の会社に一日も早く貢献したいという気持ちが焦りに変わり、当初1年間は精神的スランプに陥ってしまったのです。通常の社内人事による職務異動とは勝手が違い、自己との闘いはここから始まりました。
振り返って、この壁を乗り越えていなければ「自己改革」はできなかったものと思います。ただ、この苦い経験よりも、むしろこれが本当に「転職」した場合ならば、自分を甘やかしている余地は皆無であることを肝に銘じなければならないでしょう。ましてや、昨年勃発した世界同時不況の直撃で、自己の意思に反して“派遣切り(非正規切り)”に遭遇した皆様が新たな仕事に就くのは、本当に大変な試練であると推測するばかりです。今となっては、前掲の制度利用による人事異動は、自分自身の大きな糧となりました。今後、「社内公募異動制度」を利用される皆様に対しては、たとえ苦労が伴うとしても、敢えて「自己への挑戦」に勇気を持って臨んでいただき、より一層の「自己向上」を図られることを願っています。
参考:※日本経済新聞記事。