2010.12.23
改正臓器移植法 “あなた自身の死後は家族にオマカセでいいのですか?”
◆「同法改正」全面施行から5ヶ月経過
「臓器移植法」施行(97/10)以来、13年ぶりに『改正臓器移植法』が全面施行(10/7/17)(註1)され、5ヶ月が経過しました。同法改正の第1点で、《本人の臓器提供の意思が不明の場合でも、家族の承諾があれば臓器提供が可能となった》ことを鑑み、“家族承諾”による脳死移植の「第1例目が8月9日」(註2)であったことを踏まえ、「臓器移植に関する実績(提供及び移植件数):(社)日本臓器移植ネットワーク」の今夏8月以降の推移に着目します。
◆倍増した「臓器移植件数」
同改正法施行直後はマスメディアで頻繁に報道されましたが、公表資料(下記【参考】)を見ると、「提供件数(8~11月末現在)」の4ヶ月間合計は「42件」で、累計件数(94件:10/1/1~11/30)に対して44.7%を占めており、4ヶ月間の月平均は約11件(前7ヶ月間平均:6.6件)に増加しました。一方、「移植件数(前掲に同じ)」の合計(4ヶ月間)は「136件」で、累計件数(243件:前掲同)に対し56.0%を占め、4ヶ月間の月平均は34件(前7ヶ月間平均:15.3件)と倍増したのがわかります。勿論、「臓器提供」が無ければ「臓器移植」もままならない訳ですが、改正法施行後の4ヶ月間を見る限りにおいて、法改正の影響は顕著に表れていると思います。
因みに、同法改正の第2点目で、《15歳未満の人から脳死下での臓器提供も可能となった》「脳死下」での提供件数は4ヶ月間合計が「20件(8~11月末現在)」となり、「心臓停止後」の提供件数(前同)の「22件」と拮抗した実績となりました。
◆臓器移植の7割強は「腎臓」
「移植件数」の具体的内訳を見ると、最も多い移植臓器は「腎臓:177件(膵腎同時を含む)」で、移植累計件数(243件)の72.8%を占め、うち「脳死下」での腎臓移植は30件(対腎臓:16.9%)でした。その他の臓器は、「肝臓(22件)」、「肺(21件)」と続いています。
そこで、移植の大半を占める「腎臓」の都道府県別内訳(10/1/1~11/30:年間)を見ると、提供件数が多い順に「北海道:13件」、「愛知県:12件」、「神奈川県:8件」で、1道2県の合計で33件(対年間占率35.1%)という結果です。他方、移植件数は「愛知県:25件」、「東京都:23件」、「北海道:22件」の順に多く、1都1道1県の合計で70件(対年間占率:39.5%)という実績になっています。これらの結果は、ドナー(臓器・骨髄移植提供者)や移植受入医療機関の所在も影響していると推測しますが、とりわけ“腎臓移植実績が多い”ことが注目されます。
◆臓器移植希望者数は「約1.3万人」
臓器移植を希望する現登録者数(10/11/30現在:(社)日本臓器移植ネットワーク)は合計「1万2,773名」も存在し、移植希望臓器の大半は「腎臓:11,985名(93.8%)」です。因みに、多い順は、(1)腎臓、(2)肝臓、(3)膵臓、(4)心臓、(5)肺、(6)小腸となっています。この事実を、私達は国民のひとりとして知っておかなければならないでしょう。
当ブログの過去記事(註2)で、《法改正後、堰を切ったように増加した移植実績には、ただ驚嘆するばかり》と述べましたが、言わずもがなで「臓器提供」はムードやブームでは毛頭なく、個々の人生観にも大きく関わる重要事項として考えられなければならないものと思います。そして、同法改正後の「第2例目(8/19)・第3例目(8/22)」の早い段階で、《家族は「臓器提供について本人と話をしたことはない。」》ことに基づき、移植が実施されたのです。
◆同法改正後の「運転免許証(含む更新)」で“意思表示”可能
再度申し上げますが、“あなた自身の死後は家族にオマカセでいいのですか?”と私は問いたいのです。「臓器提供」の是非を問う前に、自分自身の心構えとしてこの問題を捉えてみてください。自動車の「運転免許証」を最近更新された方は、今一度、その裏面をご覧ください。新たに“臓器提供に関する意思表示欄”が設けられています。先ずは、あなた自身が“自己の意思表示”をしておくことが、今後の人生を生きていく上で大切なことと考えます。
【ご参照】
(註1)ブログ記事(10/7/17日付)
:『厚生労働省 「改正臓器移植法」が本日より全面施行されます』。
(註2)ブログ記事(10/8/28日付)
:「改正臓器移植法 あなたは『臓器提供意思表示カード』を持っていますか?」。
【参考】社団法人日本臓器移植ネットワーク公表資料。