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2008.05.02

請負の重要性は、「作業区分」にある (請負シリーズ6)

◆「指揮命令の無い実態」が保たれているか 
 「請負」は、一般民事では「民法第632条」が適用されるのですが、労働者派遣と明確に区別するために、所謂「区分基準」※1)が定められました。ただ、当基準の要件を完璧に満たしたとしても、果たして、請負の現場で、「注文主と労働者との間に指揮命令関係が生じていない」という実態が保たれているか否かが問題なのです。
◆請負の大半が直用労働者と共働
 「業務請負調査(中央労働災害防止協会実施)」※2)によると、請負事業者の従業員の就業状況は、a)受入事業所直用の労働者と構内下請労働者の就業状況と、b)ラインでの就業状況に分かれたデータが出されており、a)については、①「ほとんどの建屋で一緒に就業している(33%)」及び「一部の建屋で一緒に就業している(同%)」、②「すべての建屋で一緒に就業している(30%)」、「一緒に就業している建屋はない(3%)」の順で多くなっています。他方、b)については、①「一部のラインで一緒に就業している(49%)」、②「一緒に就業しているラインはない(23%)」、③「ほとんどのラインで一緒に就業している(18%)」、④「すべてのラインで一緒に就業している(9%)」という結果です。これらを見ると、請負事業者の大半が受入事業所直用の労働者と同じ建屋で就業しており、約76%がラインで一緒に就業しているという現況です。また、同調査では、約47%の事業所において、請負事業者が入っているラインに複数の構内下請事業者の労働者が一緒に就業しているという結果となっています。
◆「混在就業」が請負の現実
 同調査結果で明らかなように、請負事業者の就業現場は、建屋・ラインを問わず、少なからず受入事業所直用の労働者(社員)と混在した就業環境なので、作業に対する指示命令が曖昧になるのです。従って、指揮命令を明確にするならば、社員と請負事業者の就業現場を、「パーティション」※3)で区切ることも一工夫です。ご存知のとおり、パーティション設置は比較的時間を要せず、工場等の建築物の躯体重量を軽減でき、遮音・吸音・断熱・耐火・耐震・気密等空間に応じた機能・性能があるという特長があるので、活用しない手はありません。
◆「混在職場」では指揮命令もある
 実際、同協会の事業所に対するヒアリング調査※2)では、「ほとんどの事業所が原則的には請負事業者の責任者に対し作業に関する指示をしていますが、ラインでの混在がある職場などでは、発注者の労働者が現場で直接構内下請事業者の労働者に対し指示をすることがあります」という結果が出ています。本来的に、請負事業者には事業経営上の独立性が求められていますので、労働者派遣と判断される前に、改めて「作業区分」の見直しが肝要と考えられます。
※1)「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年4月17日労働省告示第37号)」。
※2)「製造業務における派遣労働者に係る安全衛生の実態に関する調査研究」実施に伴うアンケート調査(派遣元500事業所及び派遣先3,000事業所)・ヒアリング調査(派遣元6事業所及び派遣先12事業所)及び「職場における業務請負に係る安全衛生管理の実態に関する調査報告書」中央労働災害防止協会。
※3)部屋や講堂等空間を仕切る、取りはずしが可能な壁。間仕切り。
参考:当「人事総務部」ブログエントリー「労働者派遣とコンプライアンス」、「適正な請負」、「『告示第37号』は、請負の目安に過ぎません」、「仕事を『請負う』とは」及び「請負推進の重要ポイント」等ご参照。「派遣元責任者必携2007年版Ⅱ労働者派遣法(日本人材派遣協会編著)」社)財形福祉協会。「偽装請負-労働者派遣と請負の知識-(外井浩志著)」労働調査会。「業務請負・労働者派遣の安全衛生管理(木村大樹著)」中央労働災害防止協会。「混成職場の人事管理と法律知識Q&A(産労総合研究所編)」経営書院。