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2011.07.09

★“撓曲崖”の存在を踏まえた「東海・東南海・南海地震」対策を

◆反響大の「活断層地図」

 「東日本大震災」の発生後、慌てて購入したのが当ブログ記事(※1)でご紹介した『日本の活断層地図』です。恥ずかしながら、“慌てて”購入した事由は、「続いて西日本で大地震が発生したら」との単純な思いに駆られたからに過ぎません。ただ、当該『地図』がわかりやすく役立つと思ったのはブログ記事のとおりで、掲載後は当ブログの“人気記事TOP10”でトップの座(7/7現在)にあるという反響ぶりです。

◆“想定外”を教訓に

 しかし、この度の“超巨大地震(M:9.0)”は、日本海溝に沿って走るプレート境界が破壊されたことによる海溝型地震でしたので、「次は西日本の活断層が心配」という私の浅薄な考えは徒労に終わった感があります。震災後、識者や地震専門学者等によって詳細な調査・研究が実施されていますが、「福島第一原発(東京電力)」の大津波による被災で“非常用電源を喪失”し、爆発火災事故を勃発した“想定外”を教訓として、これまでの地震に関する過去の調査・研究は、改めて順次見直されているところです。

◆約400km以上も続く“撓曲崖”の存在

 そこで、個人的に注目するのは、名古屋大学(鈴木康弘教授ら)や広島工業大学(中田高教授ら)の研究グループによる次の調査・研究結果です。それは、沿岸から20~40km沖で、幅約20~30kmの“撓曲崖(トウキョクガイ)”が、静岡県沖から九州の「日向灘」に亘って約400km以上続いていることが確認されたのです。この「撓曲崖」とは、《撓曲(岩層が階段状に折れ曲がる現象)で生じた斜面で、撓曲崖の傾斜は断層崖のそれと比べて緩やかな場合が多い。単斜崖ともいう。:国土地理院資料》という意味です。

◆独自作製された「海底地形図」

 当該調査・研究において、中田高教授らは、《海上保安庁の水深データをもとに、静岡から九州にかけての太平洋側について、海底の細かい地形が判読できるような地図を作製》されたのです。因みに、中田高教授は、冒頭でご紹介した『日本の活断層地図』の監修者のひとりです。広島大学教育学部文学研究科ご出身の理学博士で、平面・柱状試料の地層採取装置で特許取得されていることを申し添えておきます。

◆南海トラフに並走する“撓曲崖”
 閑話休題、この約400km以上も続く「撓曲崖」に注目する事由は、この「撓曲崖」が、「東海・東南海・南海地震(境界型地震)」の3連動同時発生が想定される“南海トラフ”※2)に並行して走っているからです。つまり、「撓曲崖」は、《地下深部にある活断層がずれることで、その上の地層が撓んでできることが多く、プレート境界から枝分かれした断層(分岐断層)は巨大地震の際に同時に動く可能性がある(前掲:鈴木教授)》と考えられているからです。

◆世界初発見の「津波断層の活動痕」
 一方、更に注目するのは、《巨大分岐断層の浅部先端における地震性破壊の痕跡》が、独立行政法人海洋研究開発機構と国立大学法人東京大学の詳細な調査・分析結果により、世界で初めて発見された※3)という事実です。即ち、この津波発生源を示す地震痕跡の発見は、プレート沈み込み帯の浅部先端に「地震性破壊(断層の地震性高速すべり)に伴う摩擦熱によって引き起こされて伝播することを示しているとの結果です。従って、《従来の想定以上の広い領域に地震性破壊と海底地形変動が広がり、大きな津波が発生することを示している》ことが明らかにされたのです。

◆“南海トラフ+撓曲崖”連動の可能性は
 また、「東海・東南海・南海地震の連動性評価」結果(文部科学省研究プロジェクト)では、「宝永地震(M8.6):1707年」ではこの3連動のみならず、「日向灘」まで連動した可能性が高いと判断されました。前述のとおり、「撓曲崖」は静岡県沖から九州の「日向灘」に亘って続いていますので、「東海・東南海・南海地震」の3連動性を評価する場合、「日向灘」に至るまでの“南海トラフ+撓曲崖”連動の可能性を考慮することも重要になってくるのではないかと考えます。蛇足ながら、この3連動が懸念される各地震は、過去の「発生年」こそ異なるものの、奇しくも「安政東海(12/23)」、「東南海(12/7)」、「南海(12/21)」と、「発生月」が一致しているのを個人的に不気味に思うのは素人考えに過ぎないのでしょうか。

◆「新たな地震・津波対策」を
 政府の「中央防災会議専門調査会(座長:河田恵昭関西大学教授)」※4)は継続開催されており、この度、『中間とりまとめに伴う提言~今後の津波防災対策の基本的考え方について~(第3回)』がとりまとめられました(6/26:第4回)。この「専門調査会」の基本的考え方をベースに、前掲「撓曲崖」存在による影響を十分踏まえ、とりわけ「東海・東南海・南海地震」の3連動同時発生の想定予測も見直していただきたいと思います。それが、ひいては現在運転停止中の「浜岡原子力発電所(中部電力)」の“防波壁設置や再稼動”のための検討資料になることを期待します。
【ご参照】
※1)ブログ記事(11/3/26日付)
 :『日本の活断層地図-中部・近畿・中国・四国・九州活断層地図』。
※2)ブログ記事(11/4/16日付)
 :『東海・東南海・南海地震の同時発生時に「浜岡原子力発電所」は津波に耐えられるか』。
※3)地球深部探査船「ちきゅう」による南海トラフ地震発生帯掘削計画の成果。『統合国際深海掘削計画(IODP)』:2003年10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。『IODP第316次航海・南海トラフ地震発生帯掘削計画ステージ1』。但し、「ステージ1」は、2008/2/5に終了。
※4)中央防災会議「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」。
【資料】内閣府公表資料。国土地理院応用地理部公表資料。独立行政法人海洋研究開発機構公表資料等。