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2009.02.27

コンプラ違反と派遣可能期間制限について

◆大手派遣元事業主に「改善命令」
 「コンプライアンス」という言葉は普及しましたが、依然として“コンプラ違反”は後を絶ちません。労働者派遣事業規模の大小を問題視する訳ではありませんが、某大手派遣元事業主は、繰り返し是正指導されていたにもかかわらず労働者派遣法違反が認められた為、この度、都道府県労働局より「労働者派遣事業改善命令」(同法第49条第1項)が出されました。
◆具体的「処分理由」は
 当該「改善命令」の処分理由の一部を見ると、①《実際の業務内容と異なる業務内容》、②《派遣先から抵触日の通知を受けずに派遣契約を締結》した為、従って、③《派遣労働者に実際と異なる業務内容が示》され、④《抵触日を明示せず》、必然的に⑤《派遣元管理台帳に実際と異なる業務内容を記載し》、前記②及び④の結果、⑥《派遣先及び派遣労働者に対して派遣停止の通知を行わず》、⑦《派遣可能期間を超えて労働者派遣していた》等という内容です。
◆なぜコンプラは軽視されるのか
 当該派遣元事業主による法違反は複数拠点にわたっている為、「処分理由」は拠点ごとに提示されていますが、概ね前掲同様の理由ですので詳細は省略します。この同法違反の内容は、労働者派遣事業に携わる派遣元事業主が当然遵守しなければならない事項であることは明らかであり、本来行なうべき基本的事項が実施されていないにほかありません。このような観点からすると、派遣元事業主のコンプラ意識のレベルが問われることになります。
 当該改善命令による処分内容は、①《全社総点検による速やかな是正》、②《再発防止のための措置を講じること。》、③《遵法体制を整備すること。》となっており、同法第49条の規定に違反した場合でも「30万円以下の罰金に処する(同法第60条)」との処分に過ぎません。司法処分(許可取消し、事業廃止命令)に該当していないから等という受け止め方をしていると仮定すれば、コンプラ軽視の一因になり得ると推察します。但し、あくまで派遣元事業主によるコンプラ違反の意図等は未確認を前提とした推察に止どまるのであり、本件処分内容を非難している訳では毛頭ありませんので、当ブログ読者各位は誤解なさらないようご了解願います。
◆所謂「飛び石」派遣も同法違反
 とくに昨年は、所謂「2009年問題」を直面する課題としていましたので、当ブログ記事の「抵触日の通知義務(08/4/11日付)」、「偽装請負の是正対応(08/7/18日付)」等で一考してきましたが、「なぜコンプラ違反は撲滅されないのか」という素朴な疑問は未だ残ったままです。そして、この度の世界同時不況の猛威の影響で、「09年問題」対応は「派遣切り」と共に吹き飛ばされた感があります。とくに製造派遣等、「抵触日(3月1日)」を迎える労働者派遣対応については、過日、厚労省がダメ押し(基本的考え方)の「通達」※1)を発出しましたので、抵触日以降の所謂「飛び石」派遣※2)の実施は直ちに“コンプラ違反”となりますので十分留意する必要があります。
◆派遣先&派遣元事業主に対する規制
 また、冒頭のコンプラ違反処分理由の一つにある《⑦派遣可能期間を超えて労働者派遣していた》という事実は消える訳ではありません。別件になりますが、「派遣受入れ期間3年以上は直接雇用義務が有る(同法違反)」ことに基づき、複数の元派遣労働者が都道府県労働局に申告(2/24)したところです。この労働者派遣の役務の提供を受ける期間(派遣可能期間制限)については、《派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。》と規定(同法第40条の2)されており、派遣先における派遣労働の受入れ規制が求められています。他方、派遣元事業主に対しては、《派遣元事業主は、派遣先が当該派遣元事業主から労働者派遣の役務の提供を受けたならば第40条の2第1項の規定に抵触することとなる場合には、当該抵触することとなる最初の日以降継続して労働者派遣を行ってはならない。》と規定(同法第35条の2)されており、派遣元事業主に対しても規制しています。従って、両事業主は「抵触日」の確認・把握を軽んじた後の言い訳はできません。
◆通算される「同一場所・同一業務」派遣
 とくに留意しなければならない点は、「同一場所の同一業務」に複数労働者を派遣している場合で、派遣会社が異なっている事実や派遣労働者が交替した事実を対抗事由としても、「当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務」においては、「継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。」と規定(同法第40条の2)されていますので、当該派遣は違法となります。そして、当該派遣労働者が「当該派遣先に雇用されることを希望するものに対して、雇用契約の申込みをしなければならない。」との規定(同法第40条の4)により、雇用契約申込み義務が発生することになります。従って、派遣先事業主は労働者派遣の本来の趣旨を踏まえ、派遣労働者の労務管理に細心の注意を払う必要があるのです。
※1)「いわゆる『2009年問題』への対応について(職発第0926001号。平成20年9月26日付)」厚生労働省職業安定局。当ブログ記事(08/10/9日付):「厚労省『通達』に対する留意点について」ご参照。
※2)当ブログ記事(08/10/2日付):「『飛び石』派遣はコンプラ違反!」ご参照。
参考:平成21年2月23日付都道府県労働局需給調整事業部公表資料。「派遣元責任者必携2007年版Ⅱ労働者派遣法(社団法人日本人材派遣協会)」社)財形福祉協会。「新版 労働者派遣法の法律実務【上巻】(安西愈著)」労働調査会。